尼崎市立地域研究史料館

史料館について

平成9年度地域研究史料館事業報告『地域史研究』第28巻第1号(通巻第82号)掲載稿を一部修正

史料の収集・整理・公開

平成9年度は、古文書・近現代文書類約9,000点、地方史誌等の刊行物約2,300冊をはじめとして、引き続き多くの史料を収集しました。古文書類のうちおもなものとしては、東新田村の庄屋文書である柳川啓一氏文書(1,380点)、杭瀬村の文書としてはじめて確認された安永六年杭瀬村免割目録帳(1点)、尼崎藩の砲術調練関係史料(2点)などがあります。
このほか、地図、絵はがき、写真、ビラ・チラシ類などの収集・整理も引き続き行ないました。特に写真類については、1960年代前半頃の市域北部の神社周辺風景を写した高瀬正二氏寄贈写真(プリント104枚)と、1950年代の尼崎および各地の風景・世相を写した村井邦夫氏寄贈写真(ネガ1,596点)という2組の貴重な写真コレクションの寄贈があり、新聞発表を行ないました。また村井氏寄贈写真の一部については、『地域史研究』第27巻第3号のグラビアで紹介したところです。平成9年度末現在の史料収蔵状況については以下のページをご覧ください。

地域研究史料館収蔵史料(平成10年3月末現在)

また、これら史料の利用相談(質問、調査へのレファレンス・サービス等)および、利用者による史料複写実績は次のとおりです。

平成9年度利用相談
合計 来館 電話 その他
984件 658件 304件 22件
1,161人 831人 305人 25人
平成9年度史料複写
件数 枚数
456件 13,080枚

新「尼崎市史」編さん事業

新「尼崎市史」については、平成8年度に引き続き、地域研究史料館専門委員、新市史アドバイザーを中心に調査・検討を進め、新「尼崎市史」事業計画を策定しました。その具体的な内容は、『地域史研究』第27巻第3号に紹介したとおりです。
この事業計画を受けて、平成10年度から、新「尼崎市史」編さんはいよいよ本格的実施段階に入っていきます。

地域研究史料館専門委員
山崎隆三 大阪市立大学名誉教授、名城大学名誉教授、日本近世・近代史
田中文英 大阪女子大学教授、日本中世史
横田冬彦 京都橘女子大学教授、日本近世史

新「尼崎市史」アドバイザー
高岡裕之 相愛大学・花園大学講師、日本現代史
岩城卓二 大阪教育大学専任講師、日本近世史・生活文化史

専門委員・アドバイザー会議

7回開催

蓬川仮設住宅ふれあいセンターでの震災体験聞き取り風景(平成10年2月15日)

また事業計画策定と平行して、8年度に引き続き、農業史、旧城下町商店街、戦後の商店街、公害行政、震災体験など、さまざまな分野の聞き取り調査・フィールドワークを実施しました。多くの市民や市内団体、庁内各部局などの協力を得て実施したこれらの調査によって、関連する史料の所在があきらかとなり、史料館に提供されるケースもありました。
これらのうち農業史聞き取り調査は、平成9年度で武庫地区を対象とした調査を一応終了したため、10年度は園田地区に着手する予定です。武庫地区での調査の成果と課題については、『地域史研究』第27巻第3号掲載の古本由佳「武庫地区における農業史聞き取り調査」をご参照ください。

聞き取り調査・フィールドワーク

農業史 14回
旧城下・商店街 5回
戦中戦後体験その他 20回
合計 39回

おもな出張調査 (他市の事例の調査等)

国立国会図書館 現代史史料の調査・収集(2回)
福岡県田主丸町 町誌編さん事業に関する調査
阪神地域における新市史編さん状況調査(『地域史研究』第27巻第3号に報告掲載)

『尼崎市史』を読む会

前年度に引き続き、世話人会を中心とする自主運営の方向で、市史を読む会の各種企画を実施し、読む会ニュースも第24~31号を発行しました。7人の会員からなる世話人会を、第7回(平成9年5月29日)、第8回(9月25日)、第9回(平成10年1月30日)の3回にわたって開催し、読む会の方向性として次のような点が提起されました。

1.例会企画
従来どおりの方式で引き続き実施していく。
2.見学会
引き続き世話人会を中心に企画を立案・実施していく。史跡見学会は、「市史を読む会」以外にもさまざまな形で実施されているので、読む会らしい独自性を出す。
具体的には、読む会の例会の進行にあわせて、市史で学んだことを見学を通して再確認することを重視する。また、史跡の見学に加えて、現代的なテーマも意識して取り入れる。さらに、地元住民・団体との連携も位置づけていく。
3.夏休み企画
市史を読む会は大人を対象とした会なので、児童・生徒にも尼崎の歴史に関心を持ってもらう企画を実施してはどうか。具体的には、夏休み期間に親子で参加できるような企画を実施する。これは同時に、学校教育と市史を読む会の連携という点でも有効である。

以上の方向性に沿って、それぞれの企画を計画・実施していただきました。また、例会のゲストスピーカーの紹介や交渉、読む会以外の企画(例えば、社会科教員の研修のための歴史見学会など)への出講など、世話人をはじめとする読む会会員の皆さんには、ボランティアとしてさまざまなことに取り組んでいただきました。

例会

市史を読む会例会、講師は永井久美男氏
(平成10年2月19日)

平成9年度も引き続き、毎月第3木曜日の午後6時から7時30分、市立中央図書館セミナー室を会場に例会を開催しました。平成9年4月の第27回から10年3月の第38回まで、12回の例会を開催し、テキストの市史は第2巻第5章「近世の尼崎」の第3節の途中から第5節の途中まで、頁数では177頁から496頁まで進みました。一年間の例会参加者は延337人、一回平均28人でした。
例会ごとのテキストの解説は史料館職員が行なったほか、ほぼ3回に1回のペースでゲストスピーカーを招いて、その前後の例会でとり上げている時代やテーマに関連した講演をいただきました。ゲストスピーカーの皆さんには、すべてボランティアとしてご協力いただきました。

ゲストスピーカー
第27回(平成9年4月例会)
大国正美氏(神戸深江生活文化史料館副館長)
「尼崎藩と兵庫津」
第30回(平成9年7月例会)
海津榮太郎氏(関西城郭研究会会長)
「尼崎出身の城郭画家・荻原一青」
北垣聰一郎氏(関西城郭研究会顧問、橿原考古学研究所員)
「尼崎城と縄張りの復元」
史料館・中村 「池田家文庫所蔵城絵図調査について」
第30回のゲストスピーカーの依頼については、世話人の青手木正さん、下中俊明さんの協力を得ました。また青手木さんは、この例会で史料館・中村が報告した岡山大学・池田家文庫の調査にも、ボランティアとして同行していただきました。
第34回(平成9年11月例会)
石川道子氏(伊丹市立博物館調査員、市史を読む会世話人)
「近世の村-年貢免状をみながら-」
第37回(平成10年2月例会)
永井久美男氏(兵庫紙幣史編纂所代表)
「徳川幕府の三貨制度と藩札」

見学会

次のとおり3回実施しました。いずれも、世話人の松藤政治さんを中心に、世話人会に企画立案と実施協力をいただきました。

第6回
平成9年5月10日(土曜日)午前10時~午後3時30分 参加者62人
阪急園田~船詰神社~武田勝親墓~(豊中市域)春日神社~お亀地蔵~原田城跡~東光院(萩の寺)~能勢街道~瑞輪寺~原田神社~阪急岡町
第7回
平成9年11月8日(土曜日)午後0時50分~4時 参加者32人
阪神千船~お旅所あと碑~田蓑神社(以上、大阪市域)~寺江亭跡~有馬道~浄光寺~皇大神社~小田支所~JR尼崎
第8回
平成10年3月14日(土曜日)午後0時50分~4時15分 参加者52人
阪神大物~大物崩れ戦跡~深正院~大物主神社~大物橋跡~松島神社~大黒橋~築地初島大神宮~築地福祉会館~中在家・魚市場跡~開明小学校・空襲銃撃跡~阪神尼崎
築地福祉会館では、築地地区復興委員会委員長の安川太一さん、分科会リーダーの柏原臣昭〔かみあき〕さん、プランナーの山口憲二さんに、築地地区の震災被害と復興計画について説明していただき、さらに横山澄男さん(尼崎都市・自治体問題研究所)から築地地区の歴史についてのコメントをいただきました。
この第8回の企画は、世話人会の意見にもとづき、現代的なテーマや見学地の地元住民との交流という要素を加えた新しい試みでした。震災復興に向けた取り組みについて、地元からの説明をいただき、参加者からも好評でしたので、今後も見学会企画には、こういった内容を位置づけて盛り込んでいく予定です。

夏休み・尼崎城跡見学企画

世話人会の意見にもとづき、児童・生徒に尼崎の歴史に関心を持ってもらうための夏休み企画として、尼崎城跡見学企画を2回にわたって実施しました。

第1回
平成9年8月2日(土曜日) 午前10時~11時40分 参加者28人、引率・説明ボランティア6人
第2回
平成9年8月30日(土曜日) 午前10時~11時50分 参加者14人、引率・説明ボランティア8人

両日とも、櫻井神社から出発して、本丸跡にあたる城内小学校・中学校の周囲を説明を聞きながら歩き、堀跡の道路の幅の計測などを行ないました。見学後には別途場所を設けて、尼崎城についての概略説明と質疑応答も行ないました。
全体としては好評でしたが、はじめての試みであったことから、児童・生徒にはやや説明の内容がむずかしかったことなど、いくつかの反省点もありました。これらの経験をいかして、平成10年度にも夏休み企画を継続する予定です。
なお『地域史研究』第27巻第1号に、企画者の一人である下中俊明さんが「尼崎城をめぐって」と題して、この企画をはじめとするさまざまな尼崎城関連の取り組みについて報告しています。

番外編

毎年夏に行なわれる公民館平和事業に連携した取り組みとして、次の番外編企画を実施する予定でしたが、台風のため中止しました。

〔予定〕
平成9年7月26日(土曜日) 午後1時30分~3時30分
場所
市立中央図書館セミナー室
講師
永峰眞名氏(兵庫沖縄協会機関誌『榕樹』編集担当)
「尼崎のウチナーンチュ-『島を出た民の戦争体験集』を編集して」
川本ミハル氏(潮江在住)
「女性と小田村」

第一巻分科会

平成8年度に引き続き、毎月第1金曜日午後6時~8時、市史を読む会の第一巻分科会を地域研究史料館にて開催しました。尼崎市教委の田中勇氏をチューターとして、古代・中世の古文書解読や参考文献の学習を続け、参加者は延72人、各回6人前後でした。

尼崎の近世古文書を楽しむ会

平成8年度に開催した近世古文書入門講座の参加者を中心に、自主グループとして出発した「尼崎の近世古文書を楽しむ会」は、平成9年度も引き続き、月曜日と金曜日の2コースの例会が開かれました。両コースとも、市内在住の近世古文書研究家・野市勇喜雄さんに、ボランティア講師を務めていただきました。会を重ねるにしたがって徐々に会員が増え、会場の地域研究史料館会議室が満席に近いという盛況ぶりでした。

日曜コース 毎月第2・第4日曜 21回開催 延277人
金曜コース 毎月第2・第4金曜 22回開催 延202人
43回開催 延479人

楽しむ会では、平成9年度は二種類のテキストを取り上げました。そのうち一つは、8年度から解読を進めている古田嘉章氏文書「諸事留〔とめ〕控え帳」です。時友村(現武庫地区)の庄屋家文書である古田家文書は史料館に寄託されており、既刊『尼崎市史』近世編の編さんにも活用されました。この古田家文書のうち、幕府や藩などから時友村に通達された触などを書き留めたのが、この「諸事留控え帳」で、天保から明治期にかけての13冊が残っています。平成9年度は、このうち3冊目と4冊目をテキストとして読み進め、解読文を作成しました。
会員の皆さんも、続けて参加するうちにだんだんと興味が広がっていき、登場する人名や寺社などの固有名詞を、自分で調べている方もおられます。
9年度にテキストとして利用したもう一つの史料は、「喜寅〔きとら〕家由緒書」です。これは、菟原郡篠原村(現神戸市灘区内)の旧家・喜寅家に伝えられた文書で、尼崎市内在住の喜寅家の子孫の方から、史料館に対して解読の依頼があったものです。史料館では時間的制約などから、こういった解読依頼のすべてにはおこたえできないので、文書所蔵者の了解のもとに楽しむ会のテキストとして解読していただき、それを所蔵者にも提供しました。この文書は、篠原村開発農民の一人と伝えられる喜寅氏が、東多田(現川西市)在住の二階堂氏にゆかりのあったことから、東多田・光遍寺の僧が喜寅家の依頼により、天明7年(1787)に寺の記録から喜寅家由緒を抜き書きしたものであると、由緒書には記されています。
楽しむ会で作成した解読文は、新「尼崎市史」への活用をはじめ、今後の調査・研究に活かしていく予定です。

尼崎戦後史聞き取り研究会

平成8年9月に発足した尼崎戦後史聞き取り研究会は、史料館を会場として、月1回の研究会開催を継続しました。各会員が取り組んでいる、尼崎や阪神地域の政治史、商業、住宅、同郷団体、公害、震災などさまざまな現代史のテーマを例会で取り上げ、毎回10人前後の参加がありました。
また研究会は、平成9年10月から、尼崎地域の公害資料の保存と記録化に関する調査研究に着手しています。この調査研究は、西淀川公害裁判の訴訟団などを主体に設立されたあおぞら財団・公害地域再生センターの市民研究助成を得て、平成10年9月まで1年間実施される予定です。調査の中心をなすのは、「尼崎公害患者・家族の会」資料の整理・目録化です。この資料は、阪神・淡路大震災により尼崎公害患者・家族の会事務所が被災したため、会で保管できなくなった資料を歴史学会のボランティア団体・史料ネットの協力により搬出し、地域研究史料館で保管しているものです。市民や研究者のボランティア参加による、現代史料整理の試行的な取り組みとして、成果が期待されるところです。

各種市民団体等との連携・協力

JR尼崎駅北側の市街地再開発事業にともない、かねてから存在の知られていた猪名荘遺跡の遺構が新たに発掘され、平成9年3月に現地説明会が行なわれました。今回の発掘調査では、阪神間ではじめてとなる中世の居館跡が出土し、猪名荘の実態に迫る貴重な成果が得られました。地元の潮江地区では、地域の歴史をあとづける貴重な文化財である猪名荘遺跡について、住民自身が学びながらまちづくりに活かすべく、11月に猪名荘遺跡を学ぶ会を発足させ、市教委・県教委の発掘担当者を講師に招いて講演会を開催するなど、取り組みを開始しました。史料館では同会に対して、講師紹介などの協力に努めました。
また、震災被災地の復興に向けた文化・コミュニティ活動に取り組むフェニックス・ステーションの企画にも協力しました。
さらに、震災以来、被災歴史資料・文化財の保全をはじめ、地域の歴史を保存・活用するボランティア活動を続ける史料ネット(阪神大震災対策歴史学会連絡会・歴史資料ネットワーク)や、被災地および周辺の図書館職員有志を中心とする震災記録を残すライブラリアン・ネットワークとも引き続き連携し、被災史料保全・活用、震災の記録化と資料収集・保存などに努めました。
このほか、歴史の取り組みについてのさまざまな団体や個人や、公民館をはじめとする庁内各部局からの依頼に対して、講師派遣・紹介等の協力を行ないました。