尼崎市立地域研究史料館

史料館について

平成13年度地域研究史料館事業報告『地域史研究』第32巻第1号(通巻第94号)掲載稿を一部修正

史料の収集・整理・公開

平成13年度は、古文書・近現代文書類約3,000点、地方史誌等の刊行物約2,500冊をはじめとする各種史料を新たに整理・公開し、利用に供することができるようになりました。史料館収蔵史料の概要については、以下のページをご覧ください。

地域研究史料館収蔵史料(平成14年3月末現在)

新たに公開した古文書・近現代文書類のうち、おもなものとしては、近世中在家町の干鰯問屋・梶家の文書である梶広子氏文書(336点)、近世築地町において口入れ屋を営んだ笹邊家の笹邊啓一氏文書(1)(2)(125点)、塚口村庄屋であった岸岡家に伝来した岸岡茂氏文書(1,948点)、生津村庄屋であった福田家に伝来した福田弥平氏文書(4)(44点)、小田村・尼崎市町会関係文書(264点)、佐藤益弘氏から寄贈された尼崎製鋼所・尼崎製鉄・神戸製鋼尼崎工場関係資料(105点)などがあります。このうち尼崎製鋼所・尼崎製鉄・神戸製鋼尼崎工場関係資料を除いては、当館紀要『地域史研究』や、このサイトの誌上レファレンスのページで、概要を紹介しています。
史料整理については、古文書類や写真を中心に、昨年度に引き続き何人かの市民ボランティアの皆さんに、ご協力をいただきました。さきにあげたうちの梶広子氏文書は、こういったボランティアのおひとりである石井進さんに、整理・目録作成を実施していただいたものです。
これら史料の利用相談(質問・調査へのレファレンス・サービス等)および、利用者による史料複写実績は以下のとおりです。

平成13年度利用相談
合計 来館 電話 その他
1,474件 1,018件 369件 87件
1,765人 1,309人 369人 87人
平成13年度史料複写
件数 枚数
539件 19,755枚

新「尼崎市史」編さん事業

平成12年度に引き続き、次の5人の専門委員を中心に、調査・編さんを進めました。

尼崎市立地域研究史料館専門委員
山崎隆三 大阪市立大学名誉教授、名城大学名誉教授、日本近世・近代史
田中文英 大阪女子大学名誉教授、仏教大学文学部教授、日本中世史
横田冬彦 京都橘女子大学教授、日本近世史
岩城卓二 大阪教育大学助教授、日本近世史
佐賀朝 桃山学院大学専任講師、日本近代・現代史

また、調査員10人を委嘱し、平成12年度に引き続いて各分野ごとの聞き取り調査、史料調査などを行ないました。
実施した会議および調査の概要は次のとおりです。

長洲地区での農業史聞き取り調査

新尼崎市史編集委員会 1回
専門委員会議 4回
時代別ワーキング作業 9回
その他の調査、協議等 5回
聞き取り調査・史料調査 13回

平成13年度は、前年度に引き続き、新市史のなかでも最初に刊行する予定の「図説 尼崎の歴史」の内容・目次案の検討および、一部原稿案・組版サンプル作成などの作業を進めました。
同時に、図説刊行の準備として、近隣において近年同種の編さん事業を実施している三田市や大津市の事例を調査しました。また図版作成に関して、大阪市立大学文学部地理学教室を調査訪問し、コンピューターソフトを活用した地図図版作成方法などについて、ご教示をいただきました。今後、編さん刊行作業の進め方や予算編成の検討のうえで、これらの事例を参考とさせていただく予定です。
編さん事業における、市民や研究者、大学等研究機関との幅広い連携という点でも、前年度に引き続き、尼崎の近世古文書を楽しむ会会員による古文書等史料の翻刻、西摂研究会による尼崎藩関係史料調査研究、神戸大学との連携による震災記録デジタルコンテンツ作成など、さまざまな取り組みを実施しました。これらの具体的な内容については、それぞれの項目であらためて紹介します。

『尼崎市史』を読む会

平成6年度に開始した『尼崎市史』を読む会は、8年目となる平成13年度も、前年度に引き続き第3巻近代編をテキストに読み進めました。また世話人会を第18回(6月)と第19回(平成14年1月)の2回開催し、そこでの意見をもとに、見学会等の企画を実施しました。

例会

引き続き、市立中央図書館セミナー室を会場に、毎月第3木曜日午後6時から7時30分まで開催しました。第75回から第86回まで12回開催し、参加者は延べ287人でした。テキストの『尼崎市史』は、第3巻第6章第2節の4から開始して、年度末までに第4節の2まで進みました。
例会では、史料館職員が『尼崎市史』の解説を行なったほか、3回にわたってゲストスピーカーをお招きし、例会で学んでいる時代やテーマに関連した講演をいただきました。ゲストスピーカーの方々には、全員ボランティアとしてご協力いただきました。

ゲストスピーカー
第76回(平成13年5月例会)
石井進さん、公手博さん、島原典子さん(いずれも、尼崎の近世古文書を楽しむ会会員)
「中在家町梶家文書町並み絵図復原」
第82回(平成13年11月例会)
奥村弘さん(神戸大学文学部助教授)
「明治維新と村の変化」
第85回(平成14年2月例会)
柏原臣昭〔かみあき〕さん(築地町在住)、若狭健作さん(尼崎南部再生研究室)
「築地町の歴史と街並み復元図づくり」

見学会

平成13年度も、世話人会のメンバーが中心となって見学会を企画立案し、実施していただきました。

第17回
平成13年5月12日(土)午後1時~4時
「尼崎港線廃線跡を歩く」 参加者30人
解説 白石健二(史料館)
企画協力 青手木正さん、鈴木元昭さん
説明写真データ作成協力 NPO法人シンフォニー
中央図書館にて説明ののち、阪神大物駅西~金楽寺駅跡~天神橋緑地~赤レンガ橋台~尼崎乗降場跡~JR尼崎駅
第18回
平成13年11月10日(土)午後0時50分~4時
「西国街道の散策-尼崎・伊丹-」 参加者27人
企画・解説 松藤政治さん、豊田正義さんほか伊丹文化財ボランティアの皆さん
尼崎市バス武庫営業所~髭の渡し跡~師直塚~昆陽寺~川端本陣跡~伊丹市立博物館前にて解散
第19回
平成14年3月9日(土)午後1時~4時
「城下町の歴史をたどる-尼信会館、近代建築遺産-」 参加者35人
解説 西村豪(史料館)
実施協力 あまがさき市民まちづくり研究会
尼信会館(常設展「城下町尼崎展」の見学)~開明・城内地区近代建築遺産の見学~中央図書館にて説明と意見交換

夏休み・城跡地見学企画

市史を読む会世話人会による夏休み企画として、平成9年度から始まった児童・生徒向けの城跡地見学企画を、平成13年度も実施しました。

平成13年8月25日(土)午後1時30分~4時30分 参加者11人
解説
青手木正さん、下中俊明さん(ともに関西城郭研究会会員、市史を読む会世話人)
中村光夫(史料館)
中央図書館セミナー室(資料・スライド説明)~桜井神社~城内小学校~城内中学校~尼信会館(常設展「城下町尼崎展」の見学)

第一巻分科会

『尼崎市史』を読む会の第一巻分科会は、毎月第1金曜日の午後6時から8時、地域研究史料館にて開催しました。日本中世史の専門家・田中勇さんに指導・助言をお願いして、12回開催し、延べ参加人数は73人でした。テキストは、昨年度に引き続き網野善彦著『日本社会の歴史 中』(岩波新書、1997年)の13世紀の部分を使用、秋には読み終えました。その後も、参加者のほとんどが「網野史学」の世界に関心が高いため、網野氏の執筆論文・著作の編年リストを田中勇さんに作成していただき、その研究上の方法論の変化などについて学びました。新しいテキストとしては網野氏著『日本の歴史00巻「日本」とは何か』(講談社、2000年)を採り上げ、参加者全員が自由に意見交換しながら、最新の「網野史学」を検討しました。

自主グループ

前記の『尼崎市史』を読む会のほか、地域の歴史について学ぶ市民の皆さんによる、いくつかの自主グループがあります。ここでは尼崎の近世古文書を楽しむ会の取り組みについてご紹介します。

尼崎の近世古文書を楽しむ会

尼崎の近世古文書を楽しむ会は、地域研究史料館が保存・公開する尼崎関係の近世の古文書をテキストにして、近世のくずし字の読解に習熟することと、尼崎地域の近世史に親しむことを目的としています。会の運営は参加者が自主的に行ない、史料館はテキストの選定、内容解説等において協力しています。
同会は期限付きの講義形式ではないので、平成8年の開設以来、常時参加されてきたメンバーの読解力レベルは相当向上しています。しかし、そのために初心者が途中参加しにくいとの声がよく聞かれるようになったので、13年度から初級クラスを新設しました。初級クラスの講師は、上級クラスに参加されている石井進さんにボランティアで担当していただいています。
例会会場の会議室がせまく、クラスの定員は13名と少数ですが、少ないがゆえに参加者相互の意見交換も活発で、内容の一層深い理解に役立っているようです。
開催時間はいずれのコースも午後1時半から3時半まで、13年度の実績は次の通りです。

日曜上級 第2・第4日曜 22回開催 延162人
金曜上級 第2・第4金曜 21回開催 延176人
金曜初級 第1・第3金曜 16回開催 延103人
合計 59回開催 延441人

なお、平成8年の開設以来、ボランティアとして例会の指導にあたっていただいていた野市勇喜雄さんが、指導の継続が体力的に無理とのことで5月限りで退かれました。野市さんには、5年間ほとんど休み無く、毎月4回、延べ230回以上にわたって無償で指導を続けていただきました。退任にあたっては、地域の文化活動における貢献に対して感謝の意を表するため、市長からの感謝状を贈呈しました。
上級クラスでは、年度の前半は昨年度に引き続き、法界寺村高木新太郎氏文書のうち「触れ書控え帳」をテキストとし、年度後半には澤田兼一氏文書のうち尼崎藩関係文書をテキストにしました。
澤田家は摂津国西成郡の郷士で、尼崎藩主松平忠栄(文政12年襲封~文久元年致仕)の生母の実家です。テキストには、澤田家当主と尼崎藩奥向き役人との往復書簡の記録帳および澤田家当主(兄)と藩主生母・おすめの方(妹)との間の書状を使用しました。ほとんどの会員が、今回のように長文の仮名書き書状は未経験であったため、例会は毎回議論百出、読み始めたころは謎解きのような状態でしたが、年度末にはかなり自由に解読できる人も増えてきました。
澤田家文書は、すでに明治末期には『大阪市史』に利用されていましたが、それ以来、大阪市域の地域史料としては利用されても、尼崎藩関係史料としては研究されたことがありません。この会による解読が、今後の尼崎地域史の研究にどのような成果をもたらすか、大いに期待されるところです。
ほかにも史料館には、西摂研究会尼崎戦後史聞き取り研究会などの自主グループがあり、当館紀要『地域史研究』第32巻第1号(通巻94号)では、これらのグループの活動を紹介しています。

市民団体、研究機関等との連携・協力

市民、地域団体からの要請による出講
尼崎金融懇話会、尼崎北ロータリークラブ、尼崎東ロータリークラブ、JA兵庫六甲小田支店、常光寺老人クラブ連合会(市政出前講座)、荒木村重研究会、大阪城友の会
尼崎市役所・他行政機関への出講
尼崎市新任職員研修、小田公民館、芦屋市立美術博物館、古文書講座

加えて、史料保存の分野で、大学等専門研究機関と連携した調査研究の取り組みを、いくつか実施しました。
震災資料保存・活用の分野では、従前に引き続いて(財)阪神・淡路大震災記念協会の「震災資料の保存・利用、及び活用方策研究会」検討部会に、職員を派遣しました。平成13年度で終了した同研究会の調査検討結果は報告書にまとめられ、記念協会の収集した震災資料を受け入れて発足した「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」資料室において受け継がれていく予定です。
さらに、神戸大学が平成13年度に実施した教育研究重点支援経費「現代社会における『災害文化』についての方法論的研究」の一環として、同大学文学部と共同で、震災体験記録および被災状況写真のデジタルコンテンツ化を実施しました。このデジタルコンテンツのもととなったのは、平成12年に新「尼崎市史」編さん事業の調査として実施した、戸ノ内町在住の谷善生さんからの体験聞き取り、ならびに谷さんから提供された震災当日および直後の被災状況写真です。作成したコンテンツは、平成14年7月に神戸大学のサーバーにアップされ、インターネットで閲覧することが可能となりました。今後とも、こういった外部機関との連携による史料や調査データのデジタル化、インターネット公開に努め、新市史データベース編の実現につなげていきたいと考えています。
このほか、国立国文学研究資料館・史料館の取り組むシステム開発科研「史料情報共有化システム公開研究会」にも職員を派遣し、調査研究に参加しました。この研究会では、全国の史料保存利用機関(文書館・史料館その他)が所蔵し公開している史料情報をデータベース化し、インターネットで利用できるシステムを開発しました。その成果は、同史料館発行の『歴史史料情報の協同集約と共有化に向けてのシステム構築に関する研究』と題する報告書(平成14年3月)にまとめられています。