尼崎市立地域研究史料館

史料館について

平成14年度地域研究史料館事業報告『地域史研究』第33巻第1号(通巻第96号)掲載稿を一部修正

史料の収集・整理・公開

平成14年度は、古文書・近現代文書類約2,700点、地方史誌等の刊行物約5,500冊をはじめとする各種史料を、新たに整理・公開しました。史料館収蔵史料の概要については、以下のページをご覧ください。

地域研究史料館収蔵史料(平成15年3月末現在)

新たに公開した古文書・近現代文書類のうち、おもなものとしては、西新田村の庄屋家文書である小西光信氏文書(1,482点)、小田村・尼崎市町会関係文書(264点)、福田弥平氏文書(4)(44点)などがあります。これらの文書群についてくわしくは、本誌第32巻掲載の誌上レファレンスをご覧ください。
史料整理については、昨年度に引き続き、何人かの市民ボランティアの方にご協力をいただきました。写真類や絵はがき史料の目録作成、刊行物の記事データベース入力などに取り組んでいただいています。
これら史料の利用相談(質問・調査へのレファレンス・サービス等)および、利用者による史料複写実績は以下のとおりです。

平成14年度利用相談
合計 来館 電話 その他
1,282件 887件 305件 90件
1,534人 1,136人 307人 91人
平成14年度史料複写
件数 枚数
548件 23,084枚

新「尼崎市史」編さん事業

平成13年度に引き続き、次の5人の専門委員を中心に、調査・編さんを進めました。

尼崎市立地域研究史料館専門委員
山崎隆三 大阪市立大学名誉教授、名城大学名誉教授、日本近世・近代史
田中文英 大阪女子大学名誉教授、仏教大学文学部教授、日本中世史
横田冬彦 京都橘女子大学教授、日本近世史
岩城卓二 大阪教育大学助教授、日本近世史
佐賀朝 桃山学院大学助教授、日本近代・現代史

実施した会議等の概要は次のとおりです。

新尼崎市史編集委員会 1回
専門委員会議 5回
時代別ワーキング作業 12回

平成14年度は、前年度に引き続き、新市史のうち最初に刊行する予定の「図説 尼崎の歴史」の内容・目次案の検討および原稿作成、組み版スタイルの確定とモデル作成などの作業を進めました。
図説の刊行年度については、この間、市の事業計画検討のなかで、平成16年度の前倒し刊行を含めて検討してきましたが、当初計画どおり市制90周年の平成18年度に刊行することと決定しました。
編さん事業における、市民や研究者、大学等研究機関との幅広い連携という点では、前年度に引き続き、西摂研究会による尼崎藩関係史料調査研究、尼崎の近世古文書を楽しむ会会員による古文書等史料の翻刻、同会会員が作成した中在家町絵図のデジタル化(神戸大学との連携事業として実施)など、さまざまな取り組みを実施しました。これらの具体的な内容については、それぞれの項目であらためて紹介します。

『尼崎市史』を読む会

平成6年度の開始以来9年目を迎えた『尼崎市史』を読む会は、平成14年度も前年度に引き続き、『尼崎市史』第3巻近代編をテキストに読み進めました。また世話人会を第20回(6月)と第21回(平成15年1月)の2回開催し、そこでの意見をもとに、見学会等の企画を実施しました。

例会

引き続き、市立中央図書館セミナー室を会場に、毎月第3木曜日午後6時から7時30分まで開催しました。第87回から第98回まで12回開催し、参加者は延べ280人でした。テキストの『尼崎市史』は、第3巻第6章第4節の3から開始して、年度末までに第5節の2まで進みました。
例会では、史料館職員が『尼崎市史』の解説を行なったほか、4回にわたってゲストスピーカーをお招きし、例会で学んでいる時代やテーマに関連した講演をいただきました。ゲストスピーカーの方々には、全員ボランティアとしてご協力いただきました。

ゲストスピーカー
第88回(平成14年5月例会)
上村武男さん(作家、水堂須佐男神社宮司)
「大正期の学校、家庭、暮らし」
第91回(平成14年8月例会)
森口誠之さん(鉄道史研究者)
「戦前尼崎における鉄道計画と都市開発-宝塚尼崎電気鉄道をめぐって-」
第94回(平成14年11月例会)
枝川初重さん(元尼崎市区画整理担当職員)
「尼崎市の土地区画整理事業について」
第97回(平成15年2月例会)
羽間美智子さん(尼崎郷土史研究会会員)
「宋斤・永尾利三郎について」

見学会

平成14年度も、世話人会のメンバーが中心となって見学会を企画立案し、実施していただきました。

第20回
平成14年5月11日(土曜日)午後0時50分~4時30分「武庫川沿いを歩く」 参加者52人
企画・解説 草薙芳弘さん
阪神武庫川駅~楠霊神社~源光寺~素盞嗚神社~雉が坂伝説地~武庫大橋~東光寺~須佐男神社・水堂古墳~水堂宝篋印塔~水堂代官屋敷~JR立花駅
第21回
平成14年11月9日(土曜日)午後0時50分~4時
「猪名寺廃寺跡と南清水地区の探訪」 参加者17人
企画・解説 松藤政治さん
阪急稲野駅~御願塚古墳~杜若寺~猪名の笹原跡~法園寺~猪名野神社~猪名寺廃寺跡~大塚山古墳・南清水古墳跡

夏休み児童・生徒向け企画

夏休み期間は、例年どおり史料館閲覧室において、児童・生徒向けの課題学習シート(手引き)を用意して来館利用に応じたほか、市史を読む会世話人会による夏休み企画も引き続いて実施しました。
世話人会による児童・生徒向け企画は、尼崎城などの城跡地見学会として、平成9年度から実施してきています。平成14年度は、世話人会での相談の結果、前年までの実施内容を見直し、見学先を尼信会館に限定しました。また、歴史・文化を活かすまちづくりに取り組む市民団体「あまがさき市民まちづくり研究会」の協力を得て、同会との連携企画として実施しました。

尼信会館(常設展「城下町尼崎展」)の見学と展示解説 参加者24人
平成14年7月27日(土曜日) 午前10時30分~12時

当日は、世話人会や「あまがさき市民まちづくり研究会」のメンバーがボランティアとして参加、尼信会館の展示会場において展示解説などのご協力をいただきました。
また、世話人会のおひとりである下中俊明さん(城郭談話会会員)には、手製の尼崎城・膳所城・大垣城(いずれも戸田氏鉄築城)の天守ペーパークラフトをご持参いただき、解説していただきました。

第一巻分科会

この会は、『尼崎市史』を読む会における第一巻の解説が終わって間もない平成8年10月、読む会参加者の有志が集まって生まれました。「第一巻をもう一度勉強してみる」と尼崎の古代・中世史に関係する文献や論文を読み、自由な意見交換を通じて理解を深めています。
毎月第1金曜日の午後6時から8時頃まで、地域研究史料館にて12回開催、延べ参加人数は76人でした。会の指導・助言は、会の創設以来、日本中世史の研究者・田中勇さんにボランティアをお願いしており、報告は参加者が輪番で行なっています。
テキストは、昨年度に引き続き網野善彦著『日本の歴史00巻「日本」とは何か』(講談社、2000年)を採り上げ、「第1章『日本論』の現在 1人類社会の壮年時代」に始まり、「第3章列島社会と『日本国』 3『日本国』と列島の諸地域」まで読み進めました。そこでは、「日本国」成立以前の列島をロシア沿海州や朝鮮半島側から見る視点、すなわちアジア大陸の東辺地域としてとらえる視点の重要性と、「日本国」成立後も列島内諸地域の社会がそれぞれ独自の展開を遂げ、常に「日本国」の枠組を越えようとする可能性が存在したことが指摘されていました。参加者は、縄文・弥生、古代、中世の各時期における二つの視点を巡り、質疑や検討を重ねています。

自主グループ

『尼崎市史』を読む会とは別に、史料館に集う皆さんが、地域の歴史について学ぶ複数の自主グループがあります。このうち、西摂研究会尼崎戦後史聞き取り研究会については、それぞれ『地域史研究』掲載の河野未央さんと田中実さんによるレポートをご覧ください。ここでは、尼崎の近世古文書を楽しむ会の取り組みについて紹介します。

尼崎の近世古文書を楽しむ会

尼崎の近世古文書を楽しむ会は、地域研究史料館が保存・公開する尼崎関係の古文書をテキストにして、近世のくずし字の読解に習熟することと、尼崎地域の近世史に親しむことを目的としています。例会の運営は参加者が中心となって行ない、史料館はテキストの選定、内容解説等において協力しています。
同会は、上級2クラス、初級1クラスで構成されています。上級クラスのメンバーは読解経験10年前後の人が中心となって、講師なしで進めています。初級クラスでは、自身が上級クラスの一員でもある石井進氏にボランティアで講師を引き受けていただいています。
開催時間は、いずれのコースも午後1時半から3時半まで、14年度の実績は次の通りです。

日曜上級 第2・第4日曜 21回開催 延144人
金曜上級 第2・第4金曜 22回開催 延167人
金曜初級 第1・第3金曜 20回開催 延107人
合計 63回開催 延418人

会場の史料館会議室がせまく、1クラス定員は13名と少数ですが、かえって参加者相互の質疑・意見交換が活発に行なわれており、自由な雰囲気に満ちています。
金曜上級クラスでは、昨年度に引き続き、澤田兼一氏文書のうち尼崎藩関係文書をテキストとしました。摂津国西成郡の郷士・澤田家の当主と、その妹で尼崎藩主の側室・お寿女の方との往復書簡(仮名文字のくずし字)、澤田家と尼崎藩奥付き役人との往復書簡記録帳を解読し、解読文のワープロデータを史料館に提供していただきました。
日曜上級クラスでは、澤田氏文書中の仮名文字書簡と水堂村の支配・年貢関係文書を解読しました。同村の村人が二領主(尼崎藩松平氏と旗本青山氏)の支配のもとでどのように分割され、また協同しているのか、古文書から迫ろうとしました。
初級クラスでは、友行村の触れ状控帳をテキストに、石井講師が古文書解読の基礎となる「くずし字」の知識や、近世という時代に関する情報をまじえた解説を加えながら、解読を進めました。

市民団体、研究機関等との連携・協力

市民、地域団体からの要請による出講(市政出前講座への出講を含む)
あまがさき市民まちづくり研究会、植田交通(株)、NPO法人シンフォニー、学友会、高齢者生きがい促進協会、コープこうべ共同学苑、サウス福寿会、JA兵庫六甲小田支店、竹谷公民館グループ連絡会、南塚口町二丁目西町会、南塚口フレンドサロン
尼崎市役所・他行政機関からの要請による出講
尼崎市ちかまつ・文化担当課(寺町講演会)、同まちづくり担当課(都市美形成建築物所有者ネット研究会、武庫之荘まちなみ倶楽部)

加えて、歴史遺産保存・活用や史料保存の分野で、大学等専門研究機関と連携した調査研究の取り組みを、いくつか実施しました。
こういった連携先のひとつであり、従来から歴史分野の各種調査研究において当館と連携関係にある神戸大学文学部が、平成15年1月17日に地域連携センターを開設し、文部科学省の大学改革推進軽費の給付を受けて「歴史文化に基礎をおいた地域社会の形成のための自治体等との連携事業」を立ち上げました。震災以来、神戸大学に事務局を置いて、被災史料保全などに取り組んできた歴史学会のボランティア団体「歴史資料ネットワーク(略称史料ネット)」も、この地域連携センター内に事務局を移しており、これら震災以後の取り組みがもとになって、神戸大学文学部としての地域連携事業を展開しています。具体的には、神戸大学から阪神地域・兵庫県域の自治体や市民団体に呼びかけて、歴史・文化遺産の保存・活用などをテーマとした協議会・研究会を開催しており、当館もこれらの集まりに参加しています。また、市域戸ノ内町の震災体験・被災状況記録写真のデジタル化とホームページ公開や、尼崎の近世古文書研究会会員が作成した中在家町街並み復元図のデジタル化などを、神戸大学との連携事業として実施しました。このうち、戸ノ内町の震災体験・記録写真ホームページ構築はすでに終了しており、神戸大学のサイトにて公開されています(http://www.lit.kobe-u.ac.jp/nihonshi/tani_index.htm)。神戸大学文学部による地域連携の取り組みについては、平成15年3月発行の平成14年度大学改革推進等軽費報告書『歴史文化に基礎をおいた地域社会形成のための自治体等との連携事業』にくわしく報告されています。
また、市域北部の富松町では、都市部に残る貴重な中世城郭遺構である富松城跡に着目した「富松城跡を活かすまちづくり委員会」が地域住民によって組織され、市・市教委(歴博・文化財担当)、神戸大学文学部(地域連携センター)などとの連携のもと、学習シンポジウムや展示会の開催、ホームページ博物館の構築などに取り組みました。史料館は同委員会の取り組みに対して、企画協力や史料の貸し出し、情報提供など、さまざまな面で協力しました。この取り組みについてくわしくは、本号掲載の宮本敏一さんによる「富松城跡について学び、まちづくりに活かす取り組み」をご参照ください。
行政機関相互の連携という点では、平成14年7月26日、兵庫県公館県政資料館の主催による県内「公文書館連絡会議」が、同資料館内において開催されました。県政資料館、神戸市文書館、尼崎市立地域研究史料館からそれぞれ担当者が出席し、各機関の事業概要や課題について意見を交換、今後も継続的に集まりを持って、それぞれの実務に活かしていくことを確認しました。