尼崎市立地域研究史料館

史料館について

平成15年度地域研究史料館事業報告『地域史研究』第34巻第1号(通巻第98号)掲載稿を一部修正

史料の収集・整理・公開

平成15年度は、古文書・近現代文書類約5,300点、地方史誌等の刊行物約5,500冊をはじめとする各種史料を、新たに整理・公開しました。史料館収蔵史料の概要については、以下のページをご覧ください。

地域研究史料館収蔵史料(平成16年3月末現在)

新たに公開した古文書・近現代文書類のうち、おもなものとしては、常吉村玉井家文書(150点)、下食満村関係文書(103点)、戦前の大地主尼崎〔あまさき〕家の経営に関する尼崎耕地部文書(1,492点)などがあります。これらの文書群についてくわしくは、本誌第33巻および本号掲載の誌上レファレンスをご覧ください。
史料の利用相談(質問・調査へのレファレンス・サービス等)および、史料複写サービスの実績は次のとおりです。

平成15年度利用相談
合計 来館 電話 その他
1,553件 1,085件 350件 118件
1,784人 1,302人 355人 127人
平成15年度史料複写
件数 枚数
695件 32,548枚

史料の公開、利用という点では、史料館が作成した目録情報を利用者自身が検索できないという点が課題となっていました。これを解決すべく、平成15年度はSQLによる検索システムを館内にて自作し、閲覧窓口に端末を設置して、史料館内における検索の実現までこぎ着けました。
現在のところ、このシステムにより検索できるのは図書に分類している史料だけですが、今後は古文書をはじめ館蔵史料の全種類が検索できるよう、データを整備していく予定です。また、このシステムを、館内のみならずインターネット上にもアップし、外部からも検索できるようにしたいと考えています。これについては、外部機関との連携により実現すべく、平成16年度において検討協議中です。
なお検索システム実現に際し、窓口にパソコン端末を増設しました。同時に、史料整理の進捗にともない館内蓄積データが増加した結果、既存のパソコンのうち低スペックのものが使用に耐えなくなってきたこと、入力作業を行なってくださるボランティアの方が増えてきたこともあって、館内LANパソコンの複数台増設および入れ替えが必要となりました。そこで、館内外に不要パソコンの提供を呼びかけたところ、計9人の方からお申し出をいただき、スペックなどを確認した結果、館利用者・協力者・市職員など計6人の方から、8台の不要パソコンをご提供いただきました。さらに、これらのセットアップ等の作業についても、ボランティアの方にご協力いただきました。
誌上からではありますが、ご協力くださいました皆さまにお礼申し上げます。
史料館では、この検索システム実現をはじめ、閲覧公開等の事業上の課題について、問題点の抽出や利用者からのアンケート調査、解決方策の検討などに取り組んでいます。市役所内の業務改善運動の一環として、平成16年度も引き続き取り組む予定です。

ボランティア

平成15年度は、従来からご協力いただいているボランティアの皆さんの活動が、さらに大きく広がった年でした。前項であげたパソコンのセットアップ作業も、その一例です。このほか、写真史料その他の収納・目録データ入力・デジタル化等の作業、尼崎の近世古文書を楽しむ会の運営およびテキスト用意(古文書撮影、プリントアウト等)、古文書解読、『尼崎地域史事典』や『尼崎市史』を読む会の過去の例会実績などインターネット公開を予定しているデータの入力作業などに、計12人の方が従事してくださいました。
この結果、史料の分野では、特に写真史料の整理が大きく進み、閲覧利用も一層増加するなど、利用サービスが確実に向上しています。またデータ入力の面でも、すでに史料館ホームページ上への『尼崎市史』を読む会例会実績アップが実現し、膨大な分量である『尼崎地域史事典』入力も、遠からず公開できるめどが立つところまで作業が進んでいます。
史料館としては、こういったボランティアの皆さんの作業の成果を対外的にも目に見える形で公表していくこと、また皆さんとの間できめ細かな意思疎通を図り、やる気と善意に十分報いるシステムを構築していくことなどが、今後の課題であると考えています。

新「尼崎市史」編さん事業

平成14年度に引き続き、次の5人の専門委員を中心に、調査・編さんを進めました。

尼崎市立地域研究史料館専門委員
山崎隆三 大阪市立大学名誉教授、名城大学名誉教授、日本近世・近代史
田中文英 大阪女子大学名誉教授、仏教大学文学部教授、日本中世史
横田冬彦 京都橘女子大学教授、日本近世史
岩城卓二 大阪教育大学助教授、日本近世史
佐賀朝 桃山学院大学助教授、日本近代・現代史

実施した会議等の概要は次のとおりです。

専門委員会議 3回
時代別ワーキング作業 8回

平成15年度は、前年度に引き続き、市制90周年の平成18年度に刊行する予定の「図説 尼崎の歴史」の目次・執筆者確定、組み版スタイルの確定、原稿作成などの作業を進めました。
調査・編さんにあたっては、従前に引き続き、西摂研究会による尼崎藩関係史料の調査研究、尼崎の近世古文書を楽しむ会会員作成の中在家町絵図のデジタル化(神戸大学との連携事業として実施)など、市民、研究者、大学等研究機関との幅広い連携による実施に努めました。

『尼崎市史』を読む会

平成6年度以来実施してきている『尼崎市史』を読む会は、平成15年5月、第100回目の例会を迎えることとなりました。そこで、第22回(4月)、第23回(6月)、第24回(10月)と3回にわたって世話人会を開催し、そこでの意見をもとに、第100回記念例会をはじめ、見学会等の企画を実施しました。
なお、ボランティアの折原玲子さんに、過去の読む会例会の実績をデータ入力していただきましたので、見学会実績とあわせて、平成16年3月に史料館ホームページにアップしました。

例会

引き続き、市立中央図書館セミナー室を会場に、毎月第3木曜日午後6時から7時30分まで開催しました。第99回から第110回まで12回開催し、参加者は延べ317人でした。テキストの『尼崎市史』は第3巻第6章第5節の3から開始して、平成16年1月の第108回にて第3巻を終了しました。
例会では、史料館職員が『尼崎市史』の解説を行なったほか、4回にわたってトピックス例会を開催し、ゲストスピーカーまたは館職員が、例会で学んでいる時代やテーマに関連した講義を行ないました。ゲストスピーカーの方々には、全員ボランティアとしてご協力いただきました。

第100回記念例会
平成15年5月24日(土)午後 参加者80人
講師
公手博さん(尼崎の近世古文書を楽しむ会)
「松平忠栄生母お寿女の方」
岩城卓二さん(尼崎市立地域研究史料館専門委員、大阪教育大学助教授)
「寿女の子・忠栄と最後の藩主・忠興」
オプショナルツアー「中国街道を歩く」同日午前
企画・案内 草薙芳弘さん(読む会世話人)
阪神武庫川~雉ヶ坂伝承地~旧大庄村役場、大庄小学校~子安地蔵尊、琴浦神社~中国街道みちしるべ~貴布禰神社~尼信博物館 参加者40人
トピックス例会
第103回(平成15年8月例会)
辻川敦(尼崎市立地域研究史料館)
「尼崎の空襲-劇場・平和館への空襲を掘り起こす-」
第106回(平成15年11月例会)
内平隆之さん(神戸大学大学院自然科学研究科)
「開明小学校の歴史と建築」
第109回(平成16年2月例会)
島田克彦(尼崎市立地域研究史料館)
「尼崎市の米騒動」
第110回(平成16年3月例会)
山崎隆三さん(尼崎市立地域研究史料館専門委員)
「『尼崎市史』第3巻を終えて」

見学会

第22回
平成15年5月10日(土)午後0時50分~4時「小田地区(南部)六社めぐり」 参加者19人
企画・解説 松藤政治さん
庄下川公園~西長洲八幡神社~吉備彦神社~長洲海臨寺跡~長洲天満宮~長洲貴布禰神社~大門厳島神社~皇太神社~JR尼崎
第23回
平成15年11月22日(土)午後0時50分~4時30分「大物~築地~中在家-旧城下町を歩く-」 参加者32人
企画・解説 草薙芳弘さん
阪神大物~大物主神社~松島神社~大黒橋碑~築地町(築地町南浜住宅集会所にて地元の皆さんより町の歴史と震災復興の現状について説明、古今の町並み写真見学)~中在家町
第24回
平成16年3月13日(土)午後0時50分~4時15分「神崎、戸ノ内周辺の探索」 参加者28人
企画・解説 松藤政治さん
小田公民館~西川(尼崎藩領界碑、八幡神社)~神崎(金比羅石灯籠、五人遊女塚)~戸ノ内(治田寺、須佐男神社)~阪急園田

夏休み児童生徒向け企画

夏休み期間は、例年どおり閲覧室において課題学習シート(手引き)を用意し、児童生徒の来館利用に応じたほか、読む会世話人会による見学企画も引き続いて実施しました。
平成15年度の見学企画は、平成14年度に見学先とした尼信博物館に加えて、寺町もコースに加えました。

平成15年7月26日(土) 午前10時~12時
参加者26人 寺町の見学と解説、尼信博物館(常設展「城下町尼崎展」)の見学と展示解説

前年度と同じく、「あまがさき市民まちづくり研究会」の協力のもと、同会メンバーや読む会世話人の皆さんがボランティアとして参加、世話人会の一人である下中俊明さん(城郭談話会会員)には手製の天守ペーパークラフトをご持参いただき、解説をお願いしました。

第一巻分科会

この会には、尼崎の古代・中世史に関係する文献や論文を読み、自由な意見交換を通じて理解を深めようという有志が集まっています。
毎月第1金曜日の午後6時から8時頃まで、15年度は史料館にて12回開催、延べ参加人数は66人でした。日本中世史の研究者・田中勇さんがボランティアとして会の指導・助言をしてくださっており、報告は参加者の輪番です。
テキストは、昨年度に引き続き網野善彦著『日本の歴史00巻「日本」とは何か』(講談社、2000年)を採り上げ、「第1章『日本論』の現在 1人類社会の壮年時代」に始まり、「第3章列島社会と『日本国』 3『日本国』と列島の諸地域」まで読み進めました。そこでは、「日本国」成立以前の列島をロシア沿海州や朝鮮半島側から見る視点、すなわちアジア大陸の東辺地域としてとらえる視点の重要性と、「日本国」成立後も列島内諸地域の社会がそれぞれ独自の展開を遂げ、常に「日本国」の枠組を越えようとする可能性が存在したことが指摘されていました。参加者は、縄文・弥生、古代、中世の各時期における二つの視点を巡り、質疑や検討を重ねています。

自主グループ

西摂研究会尼崎戦後史聞き取り研究会については、『地域史研究』第34巻第1号掲載の各レポートをご覧ください。ここでは、尼崎の近世古文書を楽しむ会の取り組みについて紹介します。

尼崎の近世古文書を楽しむ会

尼崎の近世古文書を楽しむ会は、史料館が保存・公開する尼崎関係の古文書をテキストにして、近世のくずし字の読解に習熟することと、尼崎地域の近世史に親しむことを目的としています。例会の運営は参加者が中心となって行ない、史料館はテキストの選定、内容解説等において協力しています。
楽しむ会は、上級2クラス、初級1クラスで構成されています。上級クラスのメンバーは読解経験10年前後の人が中心となり、講師なしで進めています。初級クラスでは、上級クラス出身の石井進さんにボランティアで講師をお願いしています。また、テキスト作成のためのデジタル撮影等には、上級クラスの上浦有雅さんにご協力いただきました。
開催時間は、いずれのコースも午後1時半から3時半まで、15年度の実績は次の通りです。

日曜上級 第2・第4日曜 19回開催 延140人
金曜上級 第2・第4金曜 24回開催 延178人
金曜初級 第1・第3金曜 21回開催 延185人
合計 64回開催 延503人

会場の会議室がせまく、1クラス定員は13名と少数ですが、かえって参加者相互の質疑・意見交換が活発に行なわれています。
金曜上級クラスでは、昨年度に引き続き、澤田兼一氏文書のうち尼崎藩関係文書をテキストとしました。幕末期に尼崎藩主となる松平忠栄の生母の兄・沢田左平太(摂津国西成郡の郷士)と尼崎藩奥付き役人との往復書簡記録帳を解読し、解読文のワープロデータを史料館に提供していただきました。
日曜上級クラスでは、西新田村の旧庄屋家・小西光信氏文書から「御触れ状控帳」を解読しました。
初級クラスでは、昨年度に引き続き「友行村触れ状控帳」をテキストにして、石井講師の指導により解読を進めました。

市民団体、研究機関等との連携・協力

市民、地域団体からの要請による出講
園田学園女子大学(公開講座)、(財)尼崎市高齢者生きがい促進協会、一水会21(園田地区、市政出前講座)、大庄西社会福祉連絡協議会(まちの歴史再発見)、JA兵庫六甲小田支店、ひょうご大学(大学連携「ひょうご講座」)
尼崎市役所・他行政機関からの要請による出講
尼崎市立教育総合センター(社会科教育研修)、尼崎市中央保健センター(のびやか健康教室)、尼崎市立中央公民館(尼崎学講座)、西宮市立総合教育センター(生涯学習大学宮水学園)

加えて、歴史遺産保存・活用や史料保存の分野では、神戸大学をはじめとする大学等専門研究機関との連携事業を継続しました。
平成14年度に地域連携センターを立ち上げた神戸大学文学部は、歴史の分野における近隣自治体・市民団体との連携に努めており、震災以来、被災史料保全などに取り組んでいる歴史学会のボランティア団体「歴史資料ネットワーク(略称史料ネット)」も、この地域連携センター内に事務局を置いています。同センターおよび史料ネットと尼崎市富松町の市民団体「富松城跡を活かすまちづくり委員会」が連携し、当館や市教委歴博・文化財担当も協力するなか平成14年度以来取り組まれてきたホームページ「富松城歴史博物館」の構築が、平成15年度にいたって一応の完成を見ました。6月にインターネット上で公開されると、アクセス件数が2日間で2000を越えるなど、このホームページは大きな反響を呼びました。
「富松城跡を活かすまちづくり委員会」は、神戸大学などの協力を得て、9月28日には立花公民館において第三回まちづくりシンポジウム「バーチャル富松城歴史博物館から見えてきたもの」を開催しました(参加者は128人)。一方、富松に続けと、園田地区において歴史・文化を活かしたまちづくりを進める市民団体「自然と文化の森協会」が、こちらも史料ネットなどの後援を得て9月21日に園田公民館にて「猪名寺廃寺市民フォーラム」を開催、参加者200人近くという盛況ぶりでした。