尼崎市立地域研究史料館

史料館について

平成16年度地域研究史料館事業報告『地域史研究』第35巻第1号(通巻第100号)掲載稿を一部修正

史料の収集・整理・公開

平成16年度も従前に引き続き、各種史料を新たに整理・公開しました。史料館収蔵史料の概要については、以下のページをご覧ください。

地域研究史料館収蔵史料(平成17年3月末現在)

新たに整理・公開した古文書・近現代文書類のうちおもなものについては、『地域史研究』第34巻および本ウェブサイト掲載の誌上レファレンスをご覧ください。
史料の利用相談(質問・調査へのレファレンス・サービス等)および、史料複写サービスの実績は次のとおりです。

平成16年度利用相談
合計 来館 電話 その他
1,570件 1,039件 398件 133件
1,852人 1,308人 408人 136人
平成16年度史料複写
件数 枚数
656件 25,605枚

史料の公開、利用という点では、平成15年度に構築したSQLによる館蔵史料検索システムの整備・拡充ならびに、外部機関との連携による同検索システムのインターネット上へのアップについて、検討・準備を進めました。
また、館蔵の地域史文献(刊行物)約1万1千件を収録した『尼崎市立地域研究史料館地域史目録』(平成16年12月31日現在)を発行し、尼崎市立図書館や近隣図書館、全国各地の拠点図書館などに配布しました。当館が『尼崎市史』との交換などにより収集した全国各地の地域史文献を収録したもので、昭和53年(1978)以来の発行となります。尼崎や近隣はもとより、全国各地の地域史の調査研究に際して、本目録を活用して、収録の館蔵地域史文献をご利用いただければと思います。

ボランティア

「広報課写真」全体作業風景

「広報課写真」全体作業風景

広報課移管写真は、月1回共同作業日を設けて整理作業を進めていただいています。史料館のボランティアは、従来は個々の方の都合の良い日時に随時来館していただき、作業していただく方式をとってきました。このスタイルは現在も続けていますが、加えて共同作業日を設けることにより、作業内容の標準化、ボランティアの皆さん同士の交流や作業への動機付けといった効果が、あらわれているのではないかと思います。さらに、ボランティアの皆さんが相互に閲覧可能なボランティア名簿・作業記録簿も整備しました。自分以外にボランティアとして「だれが」「いつ」「どんな作業を」しているのかわかりにくい、というデメリットを解消するための試みです。共同作業の機会を利用して、ボランティアと職員の間の意見交換会なども実施しており、そこでのボランティアの皆さんの声を受け止めて、より円滑な作業態勢を整えていきたいと考えています。
また、ボランティアの皆さんの熱意・善意にこたえるための、成果の報告・公表の具体化も、今後の課題です。その一環として、ボランティアのひとりである井上衛さんによる「戦前期尼崎市営繕関係写真アルバム」の史料紹介を、本誌第34巻第2号に掲載しました。平成17年度は、ボランティアの皆さんに入力していただいた『尼崎地域史事典』のデータをはじめ、市民の皆さんの協力によって作成することのできた歴史資料データ・コンテンツ類の、インターネット上での公開に取り組んでいく予定です。

新「尼崎市史」編さん事業

平成16年度は、次の5人の専門委員を中心に、編さん作業を進めました。

尼崎市立地域研究史料館専門委員
山崎隆三 大阪市立大学名誉教授、名城大学名誉教授、日本近世・近代史
田中文英 大阪女子大学名誉教授、仏教大学文学部教授、日本中世史
市沢哲 神戸大学助教授、日本中世史
岩城卓二 大阪教育大学助教授、日本近世史
佐賀朝 桃山学院大学助教授、日本近代・現代史

実施した会議等は次のとおりです。

専門委員会議 2回
時代別ワーキング作業 12回

平成16年度は、市制90周年の平成18年度刊行予定である「図説 尼崎の歴史」の原稿作成、内容検討と編集などの作業を進めました。
原稿内容の検討にあたっては、市民参加型という新「尼崎市史」事業の基本方針に沿って、尼崎戦後史聞き取り研究会例会における「図説」近現代原稿検討を実施しました。その具体的な内容については、『地域史研究』掲載の田中実さんによる尼崎戦後史聞き取り研究会のレポートをご覧ください。

『尼崎市史』を読む会

平成6年度の開始以来11年目を迎えた『尼崎市史』を読む会は、平成16年度は『尼崎の戦後史』をテキストに読み進めました。また世話人会を第25回(4月)と第26回(平成17年1月)の2回開催し、そこでの意見をもとに、見学会等の企画を実施しました。

例会

引き続き、市立中央図書館セミナー室を会場に、毎月第3木曜日午後6時から7時30分まで開催しました。第111回から第122回まで12回開催し、参加者は延べ181人でした。テキストの『尼崎の戦後史』は第1節「敗戦直後の市民生活と尼崎市政」の1から開始して、第7節「朝鮮戦争後の不況と尼崎市財政の再建」の1まで進みました。
例会では、史料館職員が『尼崎の戦後史』の解説を行なったほか、ゲストスピーカーを招いてのトピックス例会を2回開催しました。ゲストスピーカーの方々には、全員ボランティアとしてご協力いただきました。

トピックス例会
第113回(平成16年6月例会)
笠原一人さん(京都工芸繊維大学助手)
「建築家村野藤吾と旧大庄村役場-その建築史的意味について-」
第117回(平成16年10月例会)
森下徹さん(和泉市教育委員会)
「戦後初期尼崎の労働運動、文化運動」

見学会

第25回
平成16年5月22日(土)午後0時50分~4時30分「武庫十三重塔巡り」 参加者21人
企画・解説 松藤政治さん
阪急武庫之荘~駅前一の橋~磐長姫神社~大井戸古墳~守部素盞嗚神社(守部十三重塔)~西武庫須佐男神社(西武庫十三重塔)~武庫庄(十三重塔残欠)~富松城跡~阪急武庫之荘
第26回
平成16年11月13日(土)午後0時50分~4時30分「塚口から新伊丹へ-阪急沿線の都市化の歴史をさぐる-」 参加者27人
企画・解説 井上衛さん(史料館ボランティア)、草薙芳弘さん・田中実さん(読む会世話人)、豊田正義さん(伊丹市文化財保存協会)、辻川敦・西村豪(史料館)
立花公民館(解説)~塚口住宅地~岸本吉二商店(こも樽製造)~つかしん(郡是製糸跡地)~御願塚古墳~御願塚集落、須佐男神社~阪急新伊丹

夏休み児童生徒向け企画

夏休み期間は、例年どおり閲覧室において課題学習シート(手引き)を用意し、児童生徒の来館利用に応じたほか、読む会世話人会による見学企画も引き続いて実施しました。

平成16年7月24日(土) 午前10時~12時 参加者40人
寺町の見学と解説、尼信博物館(常設展「城下町尼崎展」)の見学と展示解説

前年度と同じく「あまがさき市民まちづくり研究会」との共催企画として実施しました。同会メンバーや読む会世話人の皆さんがボランティアとして参加、世話人会の一人である下中俊明さん(城郭談話会会員)には手製の天守ペーパークラフトをご持参いただき、解説をお願いしました。

第一巻分科会

この会は『尼崎市史』を読む会の参加者の発起によって生まれました。尼崎の古代・中世史に関係する文献や論文を読み、自由な意見交換を通じて理解を深めようという有志の研究会です。
毎月第1金曜日の午後6時から8時まで、16年度は史料館にて10回開催、延べ参加人数は64人でした。日本中世史の研究者・田中勇さんがボランティア・チューターとして会の指導・助言をしてくださっており、報告は参加者の輪番です。
テキストは、昨年度に引き続き網野善彦著『日本の歴史00巻「日本」とは何か』(講談社、2000年)を採り上げ、「第3章 列島社会と『日本国』5『日本・日本人意識』の形成」に始まり、「第4章『瑞穂国日本』の虚像2『百姓=農民』という思いこみ」まで読み進めました。
「網野史観」の強烈さに圧倒されながらも、その史観の形成過程に迫ろうと網野氏の初期の論文等も回覧しました。また、報告にあたっては、引用や批判の対象となっている著書や論文にも目を通すなど、放談会にならないよう、地道な活動を続けています。

自主グループ

西摂研究会尼崎戦後史聞き取り研究会については、『地域史研究』第35巻第1号掲載の各レポートをご覧ください。ここでは、尼崎の近世古文書を楽しむ会の取り組みについて紹介します。

尼崎の近世古文書を楽しむ会

同会は、史料館が保存・公開する尼崎関係の古文書をテキストにして、近世のくずし字の読解に習熟することと、尼崎地域の近世史に親しむことを目的としています。例会の運営は参加者が中心となって行ない、史料館はテキストの選定、内容解説等において協力しています。
楽しむ会は、上級2クラス、初級1クラスで構成されています。上級クラスのメンバーは読解経験10年前後の人が中心となり、講師なしで進めています。初級クラスでは、上級クラス出身の石井進さんにボランティアで講師をお願いしています。また、テキスト作成のためのデジタル撮影等には、上級クラスの上浦有雅さんにご協力いただきました。
開催時間は、いずれのコースも午後1時半から3時半まで、16年度の実績は次の通りです。

日曜上級 第2・第4日曜 22回開催 延163人
金曜上級 第2・第4金曜 21回開催 延165人
金曜初級 第1・第3金曜 22回開催 延229人
合計 65回開催 延557人

会場の会議室がせまく、1クラス定員は13名と少数ですが、参加者相互の質疑・意見交換が活発に行なわれています。
金曜上級クラスでは、昨年度に引き続き澤田兼一氏文書の尼崎藩関係文書を読了した後、尼崎藩家中の服部清三郎(元彰)が記した文書を読み始めました。服部は藩主の相談役や公議人を勤めるなど、幕末維新期の尼崎藩政の中枢的な位置にいました。テキストは藩主・松平忠栄との藩政に関する書状の往復記録です。藩主の諮問や服部の回答の具体的内容は記されていませんが、藩主・忠栄のナマの声が聞こえ、藩家中の内情が窺えるような史料です。史料は早稲田大学図書館所蔵の服部文庫のもので、史料館の調査研究事業の一環として解読を行なっています。
日曜上級クラスでは、西新田村旧庄屋家・小西光信氏文書から「諸事願之控え帳」のうち明和7年(1770)・9年と安永3年(1774)の綴りを解読しました。年貢や水利普請・人別関係の諸願書をはじめ尼崎藩への各種の届け書控えなど、村の生産・生活全般にわたる記録です。また、このクラスの参加者が所蔵される豊島郡庄本村の「御触書・願書控帳」(明治元年・1868)も解読しました。庄本村は尼崎市域戸ノ内村に隣接する豊中市域の村です。
初級クラスでも、日曜上級クラスと同じ小西光信氏文書から「諸事願之控え帳」のうち明和7年をテキストにして、石井講師の指導により解読を進めました。

市民団体、研究機関等との連携・協力

市民、地域団体などの要請による出講
尼崎工業会青年経営研究会(設立20周年記念公開例会)、尼崎厚生会デイサービスセンターフローラ(市政出前講座)、尼崎市左門殿社会福祉防犯協議会連合会(市政出前講座)、あまがさき市民まちづくり研究会(地域活動推進講座)、大庄西社会福祉連絡協議会・NPO法人シンフォニー(まちの再発見事業)、健寿会(塚口地区住民団体、市政出前講座)、JA兵庫六甲小田支店(小田地区の歴史講座)、創価学会勇舞地区(市政出前講座)、神戸史談会(近松門左衛門・田能遺跡見学会)、阪神南ビジョン委員会(ガイド養成講座)、歴史探訪クラブ(尼崎歴史ウォーク)
尼崎市役所・他行政機関・公的機関からの要請による出講
尼崎市中学校社会科教育研究会、尼崎市都市計画課(武庫之荘駅前西地区まちづくり委員会)、尼崎市立教育総合センター(社会科教育研修)、尼崎市立園田公民館戸ノ内分館(地域講座)、尼崎市老人福祉センター千代木園(尼崎人物史講座)、尼崎東警察署(署内講話)、兵庫県高等学校教育研究会社会部会(神戸支部・阪神支部合同研究会)、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会(全国大会研修会および資料保存研修会)

これら諸団体のうち、設立20周年を迎える尼崎工業会青年経営研究会は、前記の公開例会実施に加えて記念事業として尼崎の歴史(大物浦船戦図、芦刈島)をモチーフにした石造モニュメントを製作し、阪神尼崎駅北側に設置、さらには尼崎の歴史パネル6枚(A0判=縦123.5センチ、横88.5センチ)を製作して、当館にご寄贈いただきました。
このほか、市民の皆さんによる当館利用の成果が話題を呼んだ事例として、兵庫県立尼崎小田高等学校放送部によるビデオドキュメント制作と、水堂須佐男神社での歴史展開催についてご紹介します。
兵庫県立尼崎小田高等学校放送部が制作したビデオドキュメント「どいてんか~尼崎港線跡を訪ねて~」は、昭和59年に廃止された旧国鉄尼崎港線をテーマにした作品です。この制作のため、平成16年4月から6月にかけて同校放送部の生徒や顧問の先生が数度にわたって史料館に来館し、尼崎港線に関連する文献や写真、ビデオ、地図などを調査・撮影、史料館職員に対するインタビューも行なわれました。生徒たちはさらに線路跡や周辺の探索、住民の皆さんへのインタビュー調査も行ない、完成した作品は第51回NHK杯全国高校放送コンテストに出品されて、ドキュメント部門の奨励賞(全国6位)を受賞しました。
一方、水堂須佐男神社における歴史展というのは、平成17年1月9日から23日にかけて、「写真と地図でたどるわが町いまむかし展」と題して、身近な地域の歴史をふりかえろうと企画されたものです。この展示会を主催された同社宮司で作家の上村武男さんは、当館や市立図書館、市立文化財収蔵庫が所蔵する水堂地区の写真や地図、史料類をくわしく調査し、さらには地元住民の皆さんに呼びかけて、各家に残る写真・史料類を集められました。こうして写真・地図を中心に計452点の展示物を同社社務所二階に展示して、氏子総代はじめ地元の皆さんの協力を得て開催された展示会は、延べ1500人以上の参観者が詰めかけるという大盛況となりました。
この展示会には当館所蔵の写真・地図などの複製も多数展示されたほか、水堂の旧家である松谷成蔵氏から寄託されている「享保十八年水堂村絵図」(1733)の現物を貸し出し、展示していただきました。左右205センチ、天地230センチという同絵図が展示され、広く市民の皆さんの目にふれるのははじめてのことであり、地元住民の皆さんをはじめ多くの方々が、興味深くご覧になったことと思います。なお、展示会開催後、主催者上村さんの手でその記録がまとめられ、『全記録わが町いまむかし展-尼崎水堂立花 ひとつの地域図誌-』と題して平成17年6月に発行されました。
こういった市民の皆さんの取り組みとの連携に加えて、歴史遺産保存・活用や史料保存の分野においては、従前に引き続き、神戸大学をはじめとする大学等専門研究機関との連携事業を継続しました。神戸大学は、歴史学会のボランティア団体「歴史資料ネットワーク(略称史料ネット)」による震災以来の被災史料保全活動などをふまえて平成14年度に文学部地域連携センターを設置し、歴史・文化の分野における近隣自治体・市民団体との連携に努めています。平成16年度、当館は同大学の実施する現代的教育ニーズ取組支援プログラム「地域歴史遺産の活用を図る地域リーダー養成事業」に事業協力者を派遣し、また平成17年1月30日に姫路市立城郭研究室において開催された「神戸大学文学部 第3回歴史文化をめぐる地域連携協議会」に参加して行政文書の保存・活用に関するコメントを行なうなど、連携・協力に努めました。