尼崎市立地域研究史料館

史料館について

平成17年度地域研究史料館事業報告『地域史研究』第37巻第1号(通巻第104号)掲載稿を一部修正

史料の収集・整理・公開

平成17年度も、引き続き各種史料の調査・収集・整理・公開に努めました。新たに整理・公開した古文書・近現代文書類のうち、おもなものについては本サイトの誌上レファレンスに紹介しています。また平成17年度末現在の館蔵史料の概要については、以下のページをご覧ください。

地域研究史料館収蔵史料(平成18年3月末現在)

史料の利用相談(質問・調査へのレファレンス・サービス等)および、史料複写サービスの実績は次のとおりです。

平成17年度利用相談
合計 来館 電話 その他
1,437件 972件 366件 99件
1,678人 1,202人 375人 101人
平成17年度史料複写
件数 枚数
574件 18,663枚

史料の公開、利用という点では、平成15年度に構築したオープン・ソース・データベースによる館蔵史料検索システムの整備・拡充ならびに、外部機関との連携による同検索システムのインターネット上へのアップについて、平成16年度に引き続いて検討・準備を進めました。同時に、市民ボランティアの皆さんによって原稿が入力された『尼崎地域史事典』のWeb版を構築・公開すべく、担当職員が独自に公開用データベースシステムの設計に着手し、平成17年度中にほぼ作業を完了しました。

ボランティア

平成17年度も、従来に引き続いて「『尼崎市史』を読む会」や「尼崎の近世古文書を楽しむ会」などの企画・運営、『市報あまがさき』のデータ入力作業、史料調査、写真資料類の整理とデジタル化をはじめ、多様な作業を史料館ボランティアの皆さんによる積極的な取り組みによって順調に進めることができました。
なかでも、平成16年度から本格的に開始した「尼崎市広報課移管写真」の整理作業には、7人のボランティアの方が定期的に参加してくださり、1年間の作業人数/日数は、延べ114人/79日(うち10日は共同作業日)を数えました。
当初は前年度と同様、写真ネガフィルムを専用保存ケースへ移し替える作業を実施し、新たに仮目録作成作業も開始しました。これは将来、この「広報課移管写真」を本格的に公開し、利用に供していくことを視野に入れて着手したものです。「広報課移管写真」は24枚撮りフィルム8千本以上、ベタ焼を貼り付けたスクラップブック254冊という膨大な分量であり、活用のためには内容把握が必要となるからです。
この作業を進めるなかで、ボランティアの方から、ネガフィルムの劣化現象が見られるという指摘がありました。そこで、ボランティアの皆さんにもいろいろと情報提供等のご協力をいただきながら、フィルムを扱う専門業者のアドバイスを得て原因を究明したところ、保管環境と専用保存ケースの相性が悪かったために劣化現象が起こったことがわかりました。そこで、保存ケースに移し替えていたネガフィルムを、中性紙で作成した仮収納ケースに再度移し替えるという作業を実施していただき、さらにフィルムのクリーニング作業を専門業者に委託して実施しました。
こういった、写真資料保存上の1連の措置について、作業そのものに加えて、情報収集と提供、専門業者の紹介など、さまざまな面でボランティアの皆さんに大いに力を発揮していただきました。
一方、平成16年度に史料館事業の課題のひとつとして挙げていた「ボランティアの皆さんの熱意・善意にこたえるための、成果の報告・公表の具体化」を図るべく、Web版『尼崎地域史事典』の公開準備を進めました。以前からボランティアの皆さんに協力していただいていた、事典本文のデータ入力作業については平成16年度中にほぼ作業が終了したため、17年度はボランティアの方の協力を得て、図版作成作業等を進めました。

新「尼崎市史」編さん事業

平成17年度は、前年度に引き続き、次の5人の専門委員を中心に、編集作業を進めました。

尼崎市立地域研究史料館専門委員
山崎隆三 大阪市立大学名誉教授、名城大学名誉教授、日本近世・近代史
田中文英 大阪女子大学名誉教授、仏教大学文学部教授、日本中世史
市沢哲 神戸大学助教授、日本中世史
岩城卓二 大阪教育大学助教授、日本近世史
佐賀朝 桃山学院大学助教授、日本近代・現代史

実施した会議等は次のとおりです。

専門委員会議 4回
時代別ワーキング作業 7回

平成17年度は、平成18年度に市制90周年を記念して刊行する予定の『図説尼崎の歴史』の原稿作成、原稿内容の検討と編集などの作業を進めました。
考古・古代のワーキング作業にあたっては、古代史担当アドバイザーの高橋明裕氏(立命館大学非常勤講師)及び市教育委員会歴博・文化財担当職員の参加を得ました。
また原稿内容の検討にあたっては、市民参加型という新「尼崎市史」編集事業の基本方針に沿って、尼崎戦後史聞き取り研究会例会における「図説」近現代原稿の検討を、平成16年度に引き続き実施しました。その具体的な内容については、『地域史研究』第36巻第2号掲載の井上眞理子さんによる尼崎戦後史聞き取り研究会のレポートをご覧ください。

『尼崎の農業を語る 262』の刊行

地域研究史料館では、新「尼崎市史」編集事業の一環として、同事業開始の平成8年以来、市内の農業に関する聞き取り調査を実施してきました。この調査の成果が、民間の力で刊行されることになりました。
『尼崎の農業を語る 262 尼崎市制90周年記念』
尼崎市立地域研究史料館編 同書刊行会発行
平成18年3月 397頁 B5判 500部発行
(200部配布、300部頒布=1冊5,000円)
尼崎市は一般的に工業都市として知られていますが、それとともに農業もまた、尼崎の経済を支えた重要な産業分野のひとつでした。都市化の進展にともなって、急速に縮小してきた尼崎の農業について、いま体験者から聞いて記録しておかなければ具体的な様子がわからなくなってしまう。そんな問題意識から、新市史編集事業の調査のひとつとして、平成8年から13年まで6年間にわたって、農家の皆さんからの聞き取り調査を実施しました。かつて農政を担当した市役所OB・榎本利明氏の指導のもと、史料館の職員・新市史調査員が調査を担当し、市内の60大字・計262人を対象に、調査回数は76回にのぼりました。
この調査の成果を本の形にして、市内農家の農業の営みの歴史を広く市民に伝え、地域の歴史の1頁として後世に伝えたいという思いから、市農業委員会会長の竹島良和氏を会長とする、農会関係者による刊行会が組織され、本書の刊行が実現しました。各大字ごとの、戦前から戦後にかけての農業の具体的な様子を記録したほか、「米づくりの1年」と題する年間作業の流れを写真と文章で解説した頁をはじめ、尼崎の農業を記録した貴重な写真を数多く紹介しています。

尼崎市制90周年記念事業の準備

大正5年(1916)に市制を施行した尼崎市は、平成18年に市制90周年を迎えます。この市制90周年を記念する事業として、『図説尼崎の歴史』の刊行に加えて「尼崎の歴史展」及び記念講座の開催を、地域研究史料館が担当することになりました。
そこで、平成17年度は市教育委員会歴博・文化財担当及び神戸大学文学部地域連携センターの参加を得て、展示企画立案の打ち合わせ会議を2回開催するなど、準備作業に着手しました。
なお、これらの記念企画とは別に、『地域史研究』第35巻第2号(通巻101号、平成18年3月発行)を尼崎市制90周年記念号と位置付け、通常より増頁として巻頭にカラーグラビア年表「目で見る尼崎市のあゆみ」を掲載しました。

『尼崎市史』を読む会

『尼崎市史』を読む会は、平成17年7月の第126回例会が、『尼崎の戦後史』の最後の項目である第8節4を学習する回となりました。これをもって、平成6年10月の発足以来11年間にわたって続いてきた、『尼崎市史』通史編をテキストとする例会が終了。通史編を終えたのちの例会の持ち方については、第27回世話人会(4月開催)での意見などをふまえて、会場を中央図書館セミナー室から地域研究史料館に移し、その都度参加者がテーマや話題を持ち寄るサロン的な研究会とすることとしました。
また、やはり世話人会での議論をふまえて、従来実施してきた見学会にかわり、「リサーチャー講座」と銘打った特別企画を2回シリーズで実施するなど、『尼崎市史』を読む会にとっては新たなこころみと展開の1年となりました。

例会

4月から7月までは『尼崎の戦後史』をテキストとして史料館職員が解説する例会を市立中央図書館セミナー室で、8月以降は地域研究史料館を会場にその都度参加者がテーマや話題を持ち寄る形式の例会を、毎月第3木曜日午後6時から7時30分まで開催しました。第123回から第134回まで12回開催し、参加者は延べ157人でした。

特別企画「リサーチャー講座」

市民の皆さんが、『尼崎市史』を読む会などの講座受講者から、さらに主体的にみずから調べる「リサーチャー」となっていただけるよう、調べ方の手法やその意義を学ぶ「リサーチャー講座」を実施しました。

第1弾
地域の歴史リサーチャーに学ぶ
平成17年5月21日(土)午前9時30分~午後0時30分、参加者22人、中央図書館~各コースごとの現地~地域研究史料館にて模擬閲覧調査
Aコース 尼崎えびす神社(倉持戎大宮)の引越し
講師=井上眞理子さん(尼崎探訪家・イラストレーター)
Bコース 尼崎城下町と中国街道
講師=辻川敦(史料館)
尼崎市民まちづくり研究会共催
第2弾
地域の歴史コンテンツづくりの可能性-完成した中在家町町並み復元絵図デジタル版-
平成17年6月4日(土)午後1時30分~3時30分、参加者60人、尼崎市総合文化センター7階第2会議室
〔講演〕市沢哲さん(神戸大学文学部助教授)
「地域の歴史コンテンツづくりの可能性」
〔報告〕公手博さん(尼崎の近世古文書を楽しむ会会員)、中村光夫(史料館)
「中在家町町並み復元絵図の作成とデジタル化について」
〔パネルディスカッション〕
市沢哲さん、公手博さん、上村武男さん(作家、水堂須佐男神社宮司)、松田清子さん(富松城跡を活かすまちづくり委員会)、中村光夫、河野未央さん(司会、神戸大学文学部地域連携センター研究員)
〔会場展示〕
会場壁面に市民の皆さんが持ち寄ってくださった各種の歴史コンテンツ(パネル、刊行物、デジタルコンテンツ等)を展示
神戸大学文学部地域連携センター・尼崎市民まちづくり研究会共催

第一巻分科会

この会は「『尼崎市史』を読む会」参加者の発起によって生まれました。尼崎の古代・中世史に関係する文献や論文を読み、自由な意見交換を通じて理解を深めようという有志の研究会です。
毎月第1金曜日の午後6時から8時まで、17年度は史料館にて12回開催し、延べ参加人数は62人でした。日本中世史の研究者・田中勇さんがボランティア・チューターとして会の指導・助言をしてくださっており、報告は参加者の輪番です。
テキストは、前年度に引き続き網野善彦著『日本の歴史00巻「日本」とは何か』(講談社、2000年)を読み、第4章の「『水呑』の多い港町」から「桑と養蚕と女性」まで進みました。このテキストは最終章の第5章「『日本論』の展望」から読み始めたので、これで読了です。
第4章は「『瑞穂国日本』の虚像」というテーマの下に、支配者たちの理想が「農本主義」にあったとしても、実態としては中世・近世の「百姓」の40パーセントが農業以外の多様な生業に従事していること(非農業民の存在)の重要性を主張した部分でした。中世用語の難解さに悩みながらも、論点が多岐にわたる「網野史観」を鏡として、中世史研究の現状や研究者間の視点の相違を知ることが出来ました。アマチュアが中世史研究を理解しようという、地道な活動を続けています。

自主グループ

尼崎戦後史聞き取り研究会については、『地域史研究』第36巻第2号掲載のレポートをご覧ください。また、西摂研究会については『地域史研究』第37巻第2号に報告を掲載することとし、ここでは尼崎の近世古文書を楽しむ会の取り組みを紹介します。

尼崎の近世古文書を楽しむ会

同会は、史料館が保存・公開する尼崎関係の古文書をテキストにして、近世のくずし字の読解に習熟することと、尼崎地域の近世史に親しむことを目的としています。例会の運営は参加者が中心となって行ない、テキスト解読の成果は参加者有志がデジタル入力して史料館に保存されています。将来的には、解読文のデータベースとして公開する構想のもと、史料館はテキストの選定、解読・内容調査等において助言・協力しています。
楽しむ会は、上級2クラス、初級1クラスで構成されています。上級クラスでは、読解経験十数年の人が中心となり、とくに講師は定めずに運営されています。初級クラスでは、上級クラス出身の石井進さんにボランティアで講師をお願いしています。
開催時間は、いずれのコースも午後1時半から3時半までの2時間、17年度の実績は次のとおりです。

日曜上級 第2・第4日曜 22回開催 延166人
金曜上級 第2・第4金曜 21回開催 延151人
金曜初級 第1・第3金曜 22回開催 延217人
合計 65回開催 延534人

会場の会議室がせまく、1クラス定員は13名と少数ですが、参加者相互の活発な質疑・意見交換により解読が進められています。
金曜上級クラスでは、昨年度に引き続き尼崎藩家中の服部清三郎(元彰)が記した文書を読みました。服部は藩主の相談役や明治初期に国の議事機関として設けられた公議所に藩から派遣された公議人を勤めるなど、幕末維新期の尼崎藩政の中枢的な位置にいました。テキストは藩主・松平忠栄との藩政に関する書状の往復記録です。藩主の諮問や服部の回答の具体的内容は記されていませんが、藩主・忠栄のナマの声が聞こえ、藩家中の内情が窺えるような史料です。史料は早稲田大学図書館所蔵の服部文庫のもので、史料館の調査研究事業の一環として解読を行なっています。
日曜上級クラスでは、前年度から引き続いて西新田村旧庄屋家・小西光信氏文書「諸事願之控え帳」の解読を進めました。17年度は安永6(1777)・7・9年と天明2年(1782)の綴りを解読しました。年貢や水利普請・人別関係の諸願書をはじめ尼崎藩への各種の届け書控えなど、村の生産・生活全般にわたる記録です。
初級クラスでは、日曜上級クラスと同じ小西光信氏文書から明和9年(1772)「諸事願之控え帳」の解読を終了し、源光寺文書の元禄3年(1690)「杭瀬村西光寺・家の記録」をテキストにしました。同文書は、青山氏が藩主時代のものであること、寺院関係の触や届けが中心であることなど、史料館収蔵史料のうちでもユニークな史料です。石井講師の指導による解読と、江戸時代の基礎的知識の解説が参加者に好評です。

市民団体・研究機関等との連携・協力

市民、地域団体などの要請による出講
JA兵庫六甲小田支店「小田地区の歴史講座」(市政出前講座)、あまがさき市民まちづくり研究会「夏休み子ども歴史絵画教室」「尼崎城下町イメージアップ交流事業」、一水会21「高齢者学習会」(市政出前講座)、富松城跡を活かすまちづくり委員会「中世の城跡が残る富松史跡ウォーク」、東園田町会「戦争体験文集『戦後60年・・語る、そして私は願う』刊行記念会」、兵庫歴史研究会「尼崎歴史見学会」
尼崎市役所・他行政機関・公的機関からの要請による出講
ちかまつ・文化振興課「尼崎ボランティア・ガイド養成セミナー」、老人福祉センター千代木園「尼崎人物史教室」、市立教育総合センター「社会科教育研修」、園田公民館戸ノ内分館「地域講座戸ノ内歳時記」、生涯学習中央フェア「歴史散策-橘公園・七松町の歴史」、社会福祉法人尼崎市社会福祉事業団「身体障害者デイサービス事業・寺町ウォーキング」、園田学園女子大学「公開講座」、神戸大学文学部「現代的教育ニーズ取組支援プログラム・地域歴史遺産保全活用基礎論」、新潟県立文書館・新潟県歴史資料保存活用連絡協議会共催「公文書等利用講座」
調査事業・催し等への史料提供協力
東園田町会・戦争体験文集『戦後60年・・語る、そして私は願う』編集のための調査、兵庫県土地家屋調査士会「土地・地図資料調査」(同会が神戸地方法務局と共同で実施)、尼信博物館「寺町写真展」(尼崎信用金庫本店営業部2005年地域貢献事業、展示素材提供とキャプション作成)、「歴史のまち大物・城内時代まつり」(同実行委員会への展示素材提供等)、「塚口の祭り85」(同実行委員会及び事務局=NPO法人ASUネットへの展示素材提供等)

こういった各種市民団体等との連携・協力に加えて、平成17年度、市が市民に呼びかけてまちづくり施策等を調査検討するふたつの懇話会組織、「城内地区まちづくり懇話会」と「中国街道を活かしたまちづくり懇話会」に対して、地域研究史料館からも職員が出席し、それぞれの会における意見交換や学習活動に参加しました。
さらに、歴史遺産保存・活用や史料保存の分野においては、従前に引き続き、神戸大学をはじめとする大学等専門研究機関との連携事業を継続しました。神戸大学は、歴史学会のボランティア団体「歴史資料ネットワーク(略称史料ネット)」による阪神・淡路大震災以来の被災史料保全活動などをふまえて、平成14年度に文学部地域連携センターを設置し、歴史・文化の分野における自治体・市民団体等との連携に努めています。平成16年度に引き続いて、同大学の実施する現代的教育ニーズ取組支援プログラム「地域歴史遺産の活用を図る地域リーダー養成事業」に事業協力者を派遣したほか、同プログラムのリレー講義にも職員が非常勤講師として出講。さらに平成18年2月4日、同大学文学部地域連携センターが兵庫県立歴史博物館において開催した第4回「歴史文化をめぐる地域連携協議会」にも出席し、「文書館事業と市民の歴史・まちづくりの取り組み」と題する報告を行ないました。
このほか、神戸大学文学部地域連携センターとの連携により、尼崎近世古文書を楽しむ会会員の公手博さんが史料館所蔵梶廣子氏文書のうち「中在家町町絵図」を翻刻して作成した「尼崎城下中在家町町並み復元絵図」のデジタルデータ化を実現し(神戸大学文化学研究科・松田敦志さん作成)、さきに紹介した『尼崎市史』を読む会特別企画などの場において、市民の皆さんにも公開しました。