尼崎市立地域研究史料館

史料館について

平成19年度地域研究史料館事業報告『地域史研究』第38巻第1号(通巻第106号)掲載稿を一部修正

史料の収集・整理・公開

平成19年度も、引き続き各種史料の調査・収集・整理・公開に努めました。新たに整理・公開した古文書・近現代文書類のうち、おもなものを本サイトの誌上レファレンスで紹介しています。平成19年度末現在の館蔵史料の概要については、以下のページをご覧ください。

地域研究史料館収蔵史料(平成20年3月末現在)

史料の利用相談(質問・調査へのレファレンス・サービス等)及び、史料複写サービスの実績は次のとおりです。

平成19年度利用相談
合計 来館 電話 その他
1,535件 1,014件 400件 121件
1,782人 1,244人 415人 123人
平成19年度史料複写
件数 枚数
555件 18,275枚

また、史料の公開・利用サービスの向上をはかるべく、館のスタッフが独自に構築したオープンソース・データベースによる館蔵史料検索システム及び、市民ボランティアの皆さんの協力を得て入力・構築したウェブ版尼崎地域史事典"apedia"(アペディア)を、平成19年4月よりレンタルサーバーを確保して公開しました。これにより、館蔵史料の検索と尼崎地域史の情報検索の利便性は飛躍的に増大し、公開後アクセス数も月を追って増加。この結果、平成20年3月には史料館が公開・運営するサイトへの合計アクセス数(訪問者数)が月間約7万2千アクセス、閲覧ページ数は約24万5千ページビュー(PV)を数えるに至りました。なかでも"apedia"は約23万2千PVと、日々膨大なユーザーが閲覧・利用しています。
史料館への問い合わせや来館者からの閲覧請求においても、史料検索システムで史料所蔵を確かめたうえでの問い合わせや請求が確実に多くなってきています。史料検索システムについては、館蔵史料のうち未だ図書・逐次刊行物など一部の史料ジャンルの収録にとどまっているので、今後未収録の史料についてもデータベース整備をすすめ、検索システムに加えていきたいと考えています。

ボランティア

史料館では従来から、「『尼崎市史』を読む会」などの企画・運営、史料調査や聞き取り調査、写真資料類の整理、デジタル化をはじめとする各種の作業を、史料館ボランティアの皆さんにお願いしてきました。限られたマンパワーで、多種多様な史料の整理・公開や調査事業に取り組んでいる史料館としては、こういったボランティアの皆さんの助力なくしては、館の事業は成り立ちません。
平成19年度、こういった従来の取り組み成果をふまえて、史料館では次の二点を年度目標として掲げました。まず第一に、史料整理・公開の分野において、従来以上にボランティアの皆さんによる作業の範囲を拡大していくこと。第二に、ボランティアの組織化、ボランティア・コーディネーター機能の充実という課題への取り組みです。

ボランティアの皆さんによる、
古文書目録データ整備のグループ作業

平成19年度ボランティア作業実績

  1. 写真整理 ボランティア8人
    定例作業日 毎月第1木曜日午後 12回 延べ46人
    随時個人作業 80回 延べ80人
  2. 古文書目録データ整備 ボランティア12人
    定例作業日 毎月第2・第4木曜日午後(10月後半開始)計9回 延べ45人
  3. その他
    各種調査・史料整理・データベース作業
    史料整理休館期間中の作業補助
    『尼崎市史』を読む会等講座の企画・立案・運営等

地域研究史料館専門委員

地域研究史料館では、史料館事業全般について、調査・研究していただき、また指導・助言を仰ぐことを目的として、各分野の専門家を専門委員として委嘱しています。
平成19年度、委嘱した委員は次のとおりです。

市澤哲 神戸大学文学部准教授、日本中世史
岩城卓二 京都大学人文科学研究所准教授、日本近世史
植木佳子 大阪夕陽丘短期大学非常勤講師、日本近代・現代史(平成19年6月から委嘱)
田中文英 大阪女子大学名誉教授、仏教大学文学部教授、日本中世史
山崎隆三 大阪市立大学名誉教授、名城大学名誉教授、日本近世・近代史

このうち、植木委員には、主として歴史的行政文書の保存・公開(公文書館事業)についての制度整備・検討作業をご担当いただきました。

新「尼崎市史」編集事業

新「尼崎市史」編集事業は、尼崎市制80周年記念振興事業として平成8年度に開始し、市制100周年の平成28年度に完結予定の事業です。平成18年度に市制90周年記念『図説尼崎の歴史』を刊行したのを受けて、平成19年度は今後の事業計画の見直しと、『図説』ウェブ版の構築・公開方策具体化を、専門委員と事務局(史料館)との間の検討協議によりすすめました。
この結果、市制100周年に向けての今後の新市史計画として、歴史情報のインターネット公開と刊行物発行からなる見直し計画案を立案。また『図説』ウェブ版については、尼崎市内の園田学園女子大学・同短期大学部との連携による実現をめざして、同大学との間で協議をすすめ、試行的な作業にも着手していただきました。

『尼崎市史』を読む会

『尼崎市史』を読む会は、平成18年8月の例会を最後に休会していましたが、平成19年1月に『図説尼崎の歴史』を発行したのを受けて、平成19年度再開しました。
再開にあたって、まず最初に、『図説』刊行記念の特別企画を次のとおり開催しました。

『尼崎市史』を読む会特別企画<br />『図説尼崎の歴史』に学ぶ地域の歴史

『尼崎市史』を読む会特別企画
『図説尼崎の歴史』に学ぶ地域の歴史
平成19年5月26日、園田学園女子大学にて

タイトル
『図説尼崎の歴史』に学ぶ地域の歴史
開催日
平成19年5月26日(土)
場所
園田学園女子大学(同大学と共催)
内容
講演(『図説』の内容紹介)とシンポジウム
講師
岩城卓二さん(地域研究史料館専門委員、『図説』近世項目執筆者)
辻川敦(地域研究史料館長)
パネラー
田辺眞人さん(園田学園女子大学教授)
山崎整さん(神戸新聞編集委員)
参加者
120人

これに続いて6月から、休会前と同じく毎月第3木曜日の午後6時~7時30分、中央図書館セミナー室において例会を開催。第140回から149回まで10回開催し、参加者は延べ387人でした。
このほか、世話人会を定例化し、あわせて会員による調査研究発表・情報交換の場としても位置付けたサポーターズ・サロンを10月から開始(毎月第2木曜日夜)。さらに世話人会による企画として、現地学習会形式の特別企画を次のとおり実施しました。

10月実施特別企画
タイトル
「水堂いまむかし語り」
開催日
平成19年10月27日(土)
場所
水堂須佐男神社、水堂古墳
内容
第1部=『わが町いまむかし展』写真集解説、水堂・立花の伝承・思い出・歴史など、第2部=水堂古墳、須佐男神社拝殿天井画の見学
解説
上村武男さん(作家、水堂須佐男神社宮司)、福井英治さん(元尼崎市立田能資料館長)
参加者
36人
3月実施特別企画
タイトル
「猪名寺-地域の歴史を活かす取り組み-」
開催日
平成20年3月28日(土)
内容
県立尼崎稲園高等学校において解説ののち、猪名寺廃寺模型展示(JR猪名寺駅)、大塚山古墳跡、東リ(株)社屋・黄金塚〔こがねづか〕、猪名寺廃寺跡などを見学
解説
内田大造さん(自然と文化の森協会会長)
参加者
31人

第一巻分科会

この会は「『尼崎市史』を読む会」参加者有志によって運営されています。尼崎の古代・中世史に関係する文献や論文を読み、自由な意見交換を通じて理解を深めようとしている研究会です。
毎月第1金曜日の午後6時から7時30分まで、19年度は史料館にて11回開催し、延べ参加人数は83人でした。日本中世史の研究者・田中勇さんがボランティアとして会の指導・助言をし、報告は基本的に参加者の輪番です。
前年度に続き網野善彦著『平凡社ライブラリー・日本中世の百姓と職能民』(平凡社、2003年)をテキストとし、19年度は「第1部 附論1・2」を田中勇さんの報告をもとにして読了しました。
「附論1 河音能平『中世封建制成立史論』をめぐって」は、1950年代から60年代にかけての日本中世史研究における河音氏の理論展開を網野氏が整理し、いくつかの疑問を呈したものです。また「附論2 大山喬平『日本中世農村史の研究』をめぐって」では、同著書収録論考に網野氏が大山氏の理論の形成と転換の歩みを読み取り、大山理論の「矛盾」を指摘しています。ハードな内容に苦しみながらも、戦後の古代中世史研究の大きな流れを学ぶという地道な活動が続いています。

自主グループ

地域研究史料館の自主グループのうち、尼崎戦後史聞き取り研究会については、有志によるワーキング・グループ「特飲街」の作業を除いて休会中です。
また西摂研究会については本号掲載のレポートをご覧ください。ここでは尼崎の近世古文書を楽しむ会の取り組みを紹介します。

尼崎の近世古文書を楽しむ会

尼崎の近世古文書を楽しむ会は、史料館が保存・公開する尼崎関係の古文書をテキストにして、近世のくずし字の読解に習熟することと、尼崎地域の近世史に親しむことを目的としています。例会の運営は参加者が中心となって行ない、テキスト解読の成果は参加者有志がデジタル入力して史料館に保存しています。将来的には、解読文のデータベースとして公開する構想のもと、史料館はテキストの選定、解読・内容調査等において助言・協力しています。
楽しむ会は、上級2クラス、初級1クラスで構成されています。上級クラスでは、読解経験十数年の人が中心となり、とくに講師は定めずに運営されています。初級クラスでは、上級クラス出身の石井進さんにボランティアで講師をお願いしています。初級・上級クラスとも、参加回数に制限はありません。
開催時間は、いずれのコースも午後1時半から3時半までの2時間、19年度の実績は次のとおりです。

日曜上級 第2・第4日曜 21回開催 延146人
金曜上級 第2・第4金曜 21回開催 延166人
金曜初級 第1・第3金曜 20回開催 延209人
合計 62回開催 延521人

会場の会議室がせまく、1クラス定員は13名と少数ですが、参加者相互の活発な質疑・意見交換により解読がすすめられています。
金曜上級クラスでは、前年度に続いて「旗本長谷川氏領大庄屋忌避騒動関係文書」を読み、また「幕末期尼崎藩関係文書」も読みました。
日曜上級クラスでは、前年度から続く西新田村小西光信氏文書「諸事願之控え帳」と庄本村牛頭天王社文書の解読をすすめました。「諸事願之控え帳」は村の生産・生活全般にわたる記録で、寛政4(1792)、文政5(1822)・6年の綴りを解読しました。庄本村は尼崎市戸ノ内地区に隣接する豊中市域の旧村で、牛頭天王社(現椋橋神社)は庄本および戸ノ内・高田・神崎など中世椋橋荘域村々の総鎮守と称していました。文書の内容は戸ノ内・高田・神崎などの氏子が、江戸時代後期に牛頭天王社から独立して各村に神社を祀るようになる過程のものです。
初級クラスでは、前年度に引き続き源光寺文書の元禄3年(1690)「杭瀬村西光寺・家の記録」をテキストにしました。同文書は近世前半期の青山氏領時代のもので、尼崎市域では希少な時期の史料です。寺社宛ての幕府触や尼崎藩への届け書、本山西本願寺との往復文書など多様な内容の文書を解読しています。史料の歴史的背景などに関する石井講師の解説が、参加者に好評です。なお、これに加えて随時選択するテキストとして「兵庫口説歌詞刷り物」を取り上げました。原題は「尼崎名物・おかるけん菴」、若い男女の心中話で姫路や大坂の版元から何種類か歌詞が発行されています。当時は知られた話だったのでしょうが、今では尼崎との関係も伝えられていません。

市民団体・研究機関等との連携・協力

市民、地域団体からの要請による出講等
築地地区復興奉祝祭、尼崎東ロータリークラブ例会、小田会学習会「小田・街道と暮らし」
尼崎市・他行政機関・公的機関からの要請による出講等
尼崎市ちかまつ・文化・まち情報課「尼崎ボランティア・ガイド養成セミナー」、(財)尼崎市高齢者生きがい促進協会・尼崎市立老人福祉センター千代木園「尼崎人物史教室」、尼崎市新任職員研修、尼崎市立明城小学校児童「明城遺産」調べ学習、あまがさき運河祭実行委員会主催(国土交通省・兵庫県・尼崎市等共催)「あまがさき運河祭」生涯学習講座、兵庫県阪神南県民局「神崎川圏域河川整備計画懇談会」、大阪市西淀川区「わがまち未来会議」学習会、神奈川県寒川町寒川文書館「資料保存活用講演会」、神戸大学大学院人文学研究科「地域歴史遺産保全活用基礎論」講義、同「第6回歴史文化をめぐる地域連携協議会」、全国歴史資料保存利用機関連絡協議会近畿部会近世古文書研究会
調査事業・催し等への史料提供等の協力
中国街道・城内まちづくり懇話会「あまがさき城内フォーラム」、富松城跡を活かすまちづくり委員会『もっと知りたい中世の富松城と富松』編集発行、猪名寺の自然と歴史を大切にする会・猪名寺自治会・自然と文化の森協会等による猪名寺廃寺模型展示解説パネル作成、神戸大学文学部「博物館学芸員実習(事前実習)」受け入れ