尼崎市立地域研究史料館

史料館について

平成20年度地域研究史料館事業報告『地域史研究』第39巻第1号(通巻第108号)掲載稿を一部修正

史料の収集・整理・公開

平成20年度も、引き続き各種史料の調査・収集・整理・公開に努めました。新たに整理・公開した古文書・近現代文書類のうち、おもなものは本サイトの誌上レファレンスに紹介しています。平成20年度末現在の館蔵史料の概要については、以下のページをご覧ください。

地域研究史料館収蔵史料(平成21年3月末現在)

史料の利用相談(質問・調査へのレファレンス・サービス等)及び、利用者向けの有料複写サービスの実績は次のとおりです。

平成20年度利用相談
合計 来館 電話 その他
1,578件 984件 435件 159件
1,845人 1,231人 445人 169人
平成20年度史料複写
件数 枚数
582件 20,279枚

また、史料の公開・利用サービスの向上をはかるべく、平成19年度に運用を開始したウェブ上の館蔵史料検索システム及び、市民ボランティアのみなさんの協力を得て入力・構築したウェブ版尼崎地域史事典"apedia"(アペディア)の運用を継続しました。両システムとも利用者に活用されており、これらを検索したうえで史料館にお問い合わせをいただいたり、来館して史料を閲覧請求されるケースも多くなってきています。
史料検索システムについては、館蔵史料のうち未だ図書・逐次刊行物など一部の史料ジャンルの収録にとどまっているので、平成20年度は未収録史料についてのデータベース整備、検索システム公開準備をすすめました。

ボランティア

史料館では従来から、「『尼崎市史』を読む会」などの企画・運営、史料調査や聞き取り調査、写真資料類の整理、デジタル化をはじめとする各種の作業を、史料館ボランティアのみなさんにお願いしてきました。これらに加えて、平成19年度には史料整理ボランティア作業の範囲を拡充すべく、尼崎の近世古文書を楽しむ会会員有志のボランティアを募り、古文書目録データ整備のグループ作業を開始しました。平成20年度も、引き続き写真資料整理(月1回の定例共同作業に加えて、不定期の個別作業)及び、古文書目録データ整備(月2回の定例共同作業)をはじめ、さまざまな形でボランティアのみなさんによる事業協力をいただきました。
この結果、写真資料の分野では、広報課から移管された写真群の整理作業(継続)の進捗に加えて、「御大典紀年献上尼崎市写真帖」掲載写真のデジタル化作業が完成しました(以下参照)。

この写真帖は、大正天皇の御大典(即位の礼・大嘗祭などの一連の儀式、大正4年-1915-11月に執り行なわれた)を記念して尼崎市が作成したもので、平成16年に市立中央図書館から地域研究史料館に移管されました。
大正5年の市制施行直前における、尼崎を代表する公共施設、学校、工場、風景、寺社などを撮影した41枚の写真と解説文からなっており、『尼崎市史』や『図説尼崎の歴史』をはじめとする尼崎の歴史刊行物にもしばしば写真が転用されている、貴重な写真資料群です。

写真からわかるように、この写真帖は表紙や台紙、仕切り紙などが多少傷んでいるのに加えて、写真画面の劣化も見られます。このため従来から複製を閲覧に供していましたが、さらに利用の便をはかるため、本写真帖掲載写真のデジタルデータ化と目録データ入力作業を実施することにしました。
作業は、国道43号線道路公害反対運動関係写真の目録整理・デジタル化を担当していただいたボランティアの中村弘康さんに、引き続きお願いしました(国道43号線道路公害反対運動関係写真の作業については『地域史研究』第38巻第1号-平成20年9月-グラビア参照)。

この作業の結果、右の写真のような冊子体のプリントアウトが完成し、簡便な閲覧が可能となりました。同時に、写真転用のためのデジタルデータ提供要望に対しても、すばやくこたえることができるようになりました。
目録データには、もとの写真帖に記載されたタイトルと解説文に加えて、撮影場所と、当該写真を掲載した代表的文献を調査して入力し、さらに撮影場所を地図上に示したページも用意しました。

また、平成21年1月からは、市内在住のアマチュア写真家・西村幸盛さん撮影写真の整理作業にも着手していただきました。この写真群は、尼崎市内の野鳥を中心に撮影してこられた西村さんから、額入り大判プリント140点余りをご提供いただいたもので、市内に残る自然を記録した貴重な写真群です。ボランティアの方おふたりに担当していただいて、目録データ整備作業に取り組んでいただいています。
一方、古文書目録データ整備については、平成19年度の作業を通して、ボランティアのみなさんにとっては作業のわかりにくさ、館のスタッフの側では作業時の説明や事前準備、事後のフォローなどが大きな負担となるといった課題が浮かび上がってきました。そこで平成20年度当初、これらの点について調整するため、ボランティアのみなさんとの懇談を実施し、意思疎通を通じて作業の円滑化をはかりました。
限られたマンパワーで、多種多様な史料の整理・公開や調査事業に取り組んでいる史料館としては、こういったボランティアのみなさんの助力なくしては、館の事業は成り立ちません。今後も引き続き、ボランティアのみなさんの協力を仰ぐととともに、ボランティアの組織化、ボランティア・コーディネーター機能の充実といった従来からの懸案事項にも取り組んでいきたいと考えています。

平成20年度ボランティア作業実績

  1. 写真整理 ボランティア8人
    定例作業日 毎月第1木曜日午後 12回 延べ56人
    随時個人作業 162回 延べ165人
  2. 古文書目録データ整備 ボランティア12人
    定例作業日 毎月第2・第4木曜日午後(10月後半開始)計22回 延べ92人
  3. その他
    各種調査・史料整理・データベース作業
    史料整理休館期間中の作業補助
    『尼崎市史』を読む会等講座の企画・立案・運営等

地域研究史料館専門委員

地域研究史料館では、史料館事業全般について、調査・研究していただき、また指導・助言を仰ぐことを目的として、各分野の専門家を専門委員として委嘱しています。
平成20年度、委嘱した委員は次のとおりです。

市澤哲 神戸大学文学部准教授、日本中世史
岩城卓二 京都大学人文科学研究所准教授、日本近世史
植木佳子 大阪夕陽丘短期大学非常勤講師、日本近代・現代史
垣東弘一 園田学園女子大学短期大学部准教授、教育システム情報学

市澤委員及び岩城委員には、それぞれ担当の時代分野についての調査・研究や史料情報提供などを行なっていただき、また次項に取り上げる新「尼崎市史」編集事業について、刊行物準備に向けた調査事項の検討と調査の実施などをご担当いただきました。
植木委員には、主として歴史的行政文書の保存・公開(公文書館事業)についての制度整備・検討作業をご担当いただきました。
平成20年度より新たに委嘱した垣東委員には、新「尼崎市史」編集事業の一環として予定している『図説尼崎の歴史』ウェブ版構築の、大学における試行作業を主としてご担当いただきました。

新「尼崎市史」編集事業

新「尼崎市史」編集事業は、尼崎市制80周年記念振興事業として平成8年度に開始し、市制100周年の平成28年度に完結予定の事業です。平成18年度に市制90周年記念『図説尼崎の歴史』を刊行したのを受けて、平成19年度に、今後の事業計画の見直し作業を行ないました。その結果、市制100周年に向けての今後の新市史計画として、「学ぶ市史から調べる市史へ」を基本コンセプトに、歴史情報のウェブ公開と刊行物発行からなる見直し計画案を以下リンク先イメージ図のとおり立案し、平成20年度の新「尼崎市史」編集委員会において確認しました。

新「尼崎市史」編集事業計画イメージ図 [PDF:265KB]

見直し計画中における歴史情報のウェブ公開の一環として、平成19年度から園田学園女子大学・同短期大学部との連携により着手している『図説尼崎の歴史』ウェブ版構築については、平成20年度、同大学に試行版を作成していただきました。
また、市制100周年記念刊行物の準備作業として、市民参加の開かれた場において調査・検討をすすめるべく、平成20年度は新たに新「尼崎市史」研究会を立ち上げ、次のとおり開催しました。事前に告知し、希望者は誰でも参加できるという新たなこころみでしたが、研究会というより市民講座風の内容となってしまう傾向があり、調査・研究の場としていくにはどうすればよいかという課題が残りました。

第1回
平成20年11月19日 参加者30人
テーマ「武庫地区の地理と歴史」
報告=岩城卓二専門委員、中村光夫・辻川敦(いずれも史料館)
第2回
平成21年3月5日 参加者18人
報告=高岡裕之さん(関西学院大学文学部教授)
「尼崎地域の近現代史をどう描くか」
香山明子さん(尼崎南部再生研究室)
「大尼崎が描かれた鳥瞰図」

これらに加えて、重点調査項目として平成19年度以来実施してきた、京都大学文学部所蔵宝珠院文書・法華堂文書の調査も継続しました。二年度にわたる調査により、両文書群のうち猪名荘・長洲荘など現尼崎市域に関連する文書計291点の複製を行ない、さらにこれらのうち未翻刻分の翻刻原稿作成を終えることができました。今後は、これら尼崎関係文書の内容についての調査・研究をすすめていく予定です。

『尼崎市史』を読む会

平成19年1月の『図説尼崎の歴史』刊行を受けて、平成19年度から再開した『尼崎市史』を読む会は、平成20年度も引き続き毎月第3木曜日の午後6時~7時30分、中央図書館セミナー室において例会を開催しました。第150回から第161回まで12回開催し、参加者は延べ363人でした。
例会に加えて、定例世話人会と、会員による調査研究発表・情報交換の場を兼ねたサポーターズ・サロンを毎月第2木曜日の夜に開催し、また世話人会による企画として、現地学習会形式の特別企画を次のとおり実施しました。

11月実施特別企画
タイトル
「猪名庄遺跡地の現地学習」
開催日
平成20年11月22日(土曜日)
場所
小田地域振興センター・コミュニティホールにおいて解説ののち、JR尼崎駅北側の猪名庄遺跡発掘地を見学
解説
「猪名庄遺跡について」益田日吉(市教委歴博・文化財担当課長補佐)、「JR尼崎駅周辺の再開発事業について」若竹保(市再開発調整担当課長)
参加者
24人

第一巻分科会

この会は「『尼崎市史』を読む会」参加者有志によって運営されています。尼崎の古代・中世史に関係する文献や論文を読み、自由な意見交換を通じて理解を深めようとしている研究会です。
毎月第1金曜日の午後6時から7時30分まで、平成20年度は史料館にて12回開催し、延べ参加人数は91人でした。日本中世史の研究者・田中勇さんがボランティアとして会の指導・助言をし、報告は基本的に参加者の輪番です。
前年度に続き網野善彦著『平凡社ライブラリー・日本中世の百姓と職能民』(平凡社、2003年)をテキストとして「第2部 職能民」の「1『職人』」を読了し、「2 職能民の存在形態-神人・供御人制-」に入りました。
「1『職人』」では、近世・近代の職人とは異なる中世「職人」と「職-しき」との関係を理解するのに苦労し、網野氏が「遍歴する職人」のみを強調するのに対して「定住する職人」の存在をどのように考えるのかなど、報告担当者は他の研究者の見解なども参照して議論を進めました。また、狭義の職人から広義の芸能民-職能民へと網野氏の視野が広がって行くにともなって、天皇制と被差別の問題にも論点が及んでいるので、近年の被差別部落史の研究についても学習しました。
中世社会像の捉え難さに悩みながらも、中世史研究を理解しようという地道な活動を続けています。

児童・生徒向け「歴史ウォークラリー」の実施

『尼崎市史』を読む会の世話人会メンバーなどからは、『尼崎市史』を読む会に加えて、児童・生徒が地域の歴史にふれることのできる機会を地域研究史料館として設けて欲しいという意見・要望が、従前から寄せられていました。それで、平成9年度から18年度までは、史料館主催、尼崎市民まちづくり研究会との共催、同会主催事業への協力などといった形で、夏休みの時期になんらかの形で児童・生徒向け企画を実施してきました。
平成19年度は児童・生徒向け企画を実施しませんでしたが、平成20年度、史料館も立地している中央地域(中央支所の管轄区域)の地域課題として市の各事業所ごとに児童・生徒向け事業を実施する方向が申し合わされたことなどから、ふたたび位置付けて実施することにしました。
実施内容は、以下のとおりです。

タイトル
「歴史ウォークラリーin城内・築地-尼崎城・近代建築・だんじり-」
開催日
平成20年7月26日(土曜日)
実施主体
主催 尼崎市立地域研究史料館
共催 尼崎市民まちづくり研究会、中国街道・城内まちづくり懇話会、城内のまちづくりを考える会
協力
兵庫県立尼崎高等学校
コース
阪神尼崎駅~旧尼崎警察署~櫻井神社~明城小学校~築地・小島のだんじり小屋~初島大神宮(スポットごとに解説、最後にクイズの答え合わせ)
参加者
19人

この企画は、さきにふれた中央地域の地域課題に向けた取り組み=「尼崎市中央地域振興連携推進会議統一テーマ事業・はばたけ中央っ子」の一環として実施しました。また、市が市民との協働により継続的に推進している「城内まちづくり事業」の関連事業としても位置付け、近代建築遺産として市が将来的に保存・活用していく予定の旧尼崎警察署建物の見学も、プログラムに組み込みました。
一般参加者19人に加えて、学校の実習として参加し、道案内や引率を手伝ってくださった県立尼崎高等学校の生徒さん約40人や、受付・スポット解説・誘導などを引き受けてくださったボランティア18人(共催団体メンバー及び、『尼崎市史』を読む会、尼崎ボランティア・ガイドの会のみなさん等)、さらにだんじり小屋や初島大神宮で迎えてくださった地元のみなさんなど、総勢100人近いにぎやかな催しとなりました。

自主グループ

ここでは、地域研究史料館の自主グループである「尼崎の近世古文書を楽しむ会」の取り組みについて、ご紹介します。

尼崎の近世古文書を楽しむ会

尼崎の近世古文書を楽しむ会は、史料館が保存・公開する尼崎関係の古文書をテキストにして、近世のくずし字の読解に習熟することと、尼崎地域の近世史に親しむことを目的としています。例会の運営は参加者が中心となって行ない、テキスト解読の成果は参加者有志がデジタル入力して史料館に保存しています。将来的に解読文のデータベースとして公開する構想のもと、史料館はテキストの選定、解読・内容調査等において助言・協力しています。
楽しむ会は、開催日が異なる3クラスで構成されています。第2・第4の日曜日と金曜日開催の2クラスでは、読解経験の長い人が中心となり、とくに講師は定めずに運営されています。第1・第3金曜日開催クラスでは、本会創設初期からの会員である石井進さんにボランティアで講師をお願いしています。いずれのクラスも会場は当館会議室。参加回数に制限はなく、新規参加は定員に空席があれば随時受け付けています。
開催時間は、いずれのクラスも午後1時半から3時半までの2時間、20年度の実績は次のとおりです。

第2・第4日曜クラス 20回開催 延141人
第2・第4金曜クラス 24回開催 延192人
第1・第3金曜クラス 19回開催 延193人
合計 63回開催 延526人

会場の会議室がせまく、1クラス定員は13人と少数ですが、参加者相互の活発な質疑・意見交換により解読がすすめられています。
第2・第4日曜クラスでは、前年度から続く西新田村小西光信氏文書「諸事願之控帳」と旧尼崎藩士岩佐氏の履歴文書その他を解読しました。「諸事願之控帳」は村の生産・訴訟・生活などに関する諸種の文書を記録したもので、本年度は天保4年(1833)から同8年2月までの綴りを読了しました。藩士の岩佐氏は、17世紀半ばに江戸で桜井松平氏に仕官、藩主が信州飯山・掛川・尼崎と転封する間にも江戸詰めを続け、幕末か明治初年に尼崎へ移った家です。少禄の藩士では近世前半期の履歴が分かる珍しい例です。
第2・第4金曜クラスでは、前年度に続いて「幕末期尼崎藩関係文書」を読みました。
第1・第3金曜クラスでは、前年度から解読していました源光寺文書、元禄3年(1690)「杭瀬村西光寺・家の記録」を読了しました。同文書は尼崎市域では希少な近世前半期・青山氏領時代のもので、寺社宛ての幕府触や寺院から尼崎藩への届け書、本山西本願寺との往復文書など多様な内容の文書が記録されています。新しいテキストとしては、古田嘉章氏文書「時友村諸事留控帳」のうち天明7年(1787)分を読み始めました。
解読成果の一般利用を図るために、本年度から各クラスにおいて解読内容の目次データを作成するようにしました。文書日付、差出し・宛名、標題、キーワードを、各クラスの出席者が当番で作成し、史料館担当者が入力しています。整備を進めている史料館データベース群の一群を形成できればと考えています。

市民団体・研究機関等との連携・協力

市民、地域団体からの要請による出講等
尼崎市国際交流協会「姉妹都市アウクスブルク市訪問尼崎市青年使節団員研修」、尼崎南部グリーンワークス「ミニフォーラム」、NPO法人シンフォニー「文化ボランティアコーディネーター養成講座」、あまがさき市民まちづくり研究会「あまがさき市民まちづくりフォーラム」、猪名の会「『園田のあゆみ』発刊記念フォーラム」、フェニックスの会(人権教育小集団学習会、市政出前講座)、三楽会(市政出前講座)
尼崎市・他行政機関・公的機関からの要請による出講等
尼崎市財産活用担当「大庄中部《未来につなぐ》まちづくり市民委員会」、尼崎市協働参画課・生きがいサポートセンター阪神南共催「チャレンジ志民塾」、尼崎市ちかまつ・生活文化・まち情報課「尼崎ボランティア・ガイド養成セミナー」、尼崎市新任職員研修、市立小田公民館「市民大学講座」、市立明城小学校校内研修会、市立成文小学校社会科授業、市立城内高等学校「庄下川ウォーキング」、聖トマス大学「尼崎学」講義、園田学園女子大学「シニア専修コース・日本史学」講義、兵庫県阪神南県民局「神崎川圏域河川整備計画懇談会」、尼崎調停懇話会民事部会自主研究会、芦屋市立美術博物館「古文書講座」、神戸大学大学院人文学研究科「地域歴史遺産保全活用基礎論」講義、全国図書館大会兵庫大会分科会、広島県市町村公文書等保存活用連絡協議会研修会
調査・出版・催し等への史料提供等の協力
中国街道・城内まちづくり懇話会等主催「あまがさき城内フォーラム」及び「歴史セミナー」、猪名の会『園田のあゆみ』編集発行、神戸大学文学部「博物館学芸員実習(事前実習)」受け入れ