尼崎市立地域研究史料館

史料館について

平成23年度地域研究史料館事業報告

1 史料の収集・整理・公開

平成23年度も、引き続き各種史料の調査・収集・整理・公開に努めました。平成23年度末現在の館蔵史料の概要は、以下のページ掲載の一覧表のとおりです。

地域研究史料館収蔵史料(平成24年3月末現在)

また、史料の利用相談(質問・調査へのレファレンス・サービス等)および、利用者向けの複写サービスの実績は次のとおりです。

平成23年度利用相談
来館 電話 e-mailその他 合計
943件 273件 144件 1,360件
1,083人 279人 151人 1,513人
平成23年度史料複写
(撮影を除く有料複写サービスの実績)
件数 枚数
601件 14,073枚
相談利用人数の変化

古文書・近現代文書類

平成23年度、新たに47件3,938点の文書群を受け入れました。これらの新規受け入れ分を含めて、未整理史料の整理・公開作業をすすめるとともに、旧市史編集資料目録に収録されておりデータベース化されていない文書群について、尼崎の近世古文書を楽しむ会の会員有志によるボランティア協力を得てデータベース化作業を進めています。
これらの作業により、新たに作成した所蔵古文書・近現代文書類の文書群概要および文書目録のPDFデータを、当館公式Web サイトに順次公開しています。今後も引き続き、新規受け入れ文書群および過去に受け入れたデータ未作成の文書群について、概要・目録データを作成し、公開に努めていきたいと考えています。
古文書整理の分野において、平成23年度、古文書整理ボランティアのみなさんによる「常吉村文書」の整理作業を新たに開始しました。これは、新「尼崎市史」編集事業の一環として、一連の古文書整理の様子を記録し、新市史に盛り込んでいこうというものです。平成23年6月に作業を開始し、8月まで3回の作業によりホコリや煤で汚れた状態の文書群のクリーニングを行ない、9月以降は計5回の目録採取作業を実施しました。平成24年度も整理作業を継続する予定です。

歴史的公文書

(参考: 「事業要覧」資料編p22「歴史的公文書保存・公開事業の概要」、p23「歴史的価値を有する公文書等収集・保存方針及び取扱要領」)
平成23年度は、例年の庁内年限廃棄公文書からの歴史的公文書選別・収集・簿冊目録リスト作成作業に加えて、史料館所蔵の永年保存文書を分室から本館へ移し、閲覧公開に向けての本格的な整理作業に着手しました。現在、簿冊目録の整備とラベル貼付を完了し、引き続き痛みの激しい簿冊の補修と件名目録の作成を行なっています。

史料検索システム等

平成19年度に運用を開始したWeb 上の館蔵史料検索システムおよび、市民ボランティアのみなさんの協力を得て入力・構築したWeb 版尼崎地域史事典"apedia"(アペディア)の運用を継続しました。
また、史料検索システムについては、今後写真類および絵はがき類のシステムへの追加を予定しており、その準備作業を実施しました。

レファレンス協同データベースへの参加

平成23年11月、地域研究史料館はWeb上の公開データベースである「レファレンス協同データベース」に参加しました。このデータベースは、図書館及び類似機関が相互にレファレンス情報を交換・共有し、さらに利用者に広くレファレンス情報を公開していくことを目的として、国立国会図書館が構築・運営しています。
史料館ではこの間、利用に関する情報発信、つまり史料館ではどのようなレファレンス・サービスを行なっており、どういった史料を利用して何を調べることができるのかという情報を広く市民のみなさんに知っていただき、そのことを通じて利用の増大を図っていくことを組織課題としています。この課題解決に向けた取り組みのひとつとして、「レファレンス協同データベース」への参加を選択しました。
参加後は、2週間に1件のペースでこのデータベースに登録するレファレンス事例を職場ミーティングの場で選び、原稿を作成して登録していくことをルール化しました。この結果、平成24年3月末までにレファレンス事例6件、調べ方マニュアル1件を登録・公開しました。
登録したレファレンス事例は、「地名「崇徳院」の由来を知りたい」「尼崎で戦前に盛んだったダンスホールについて調べたい」「学童疎開当時の疎開先のことを確かめたい」といった、実際にあった問い合わせで、なおかつ汎用性があり利用者にとって共通する関心テーマのもの、あるいは館蔵史料の特徴がよくあらわれているものなどを優先的に選ぶようにしています。
このデータベースは主として図書館相互の情報共有を目的とするものであり、史料館として広く一般への利用情報の発信という課題については、引き続き取り組んでいく必要があると考えています。とはいえ、「レファレンス協同データベース」への登録内容を見て利用者が来館されるケースもあり、史料館にとって情報発信の有力なツールとなっています。

史料補修及びデジタル複製の実施

平成23年度、国の地域活性化交付金(「住民生活に光をそそぐ交付金」)を活用して、次のとおり史料の補修及びデジタル複製を実施しました。

  • 歴史的公文書補修製本 16冊(明治~昭和戦後初期の歴史的公文書のうち、とくに料紙の劣化等が進行しており、補修を要するもの)
  • 古文書絵図複製 8件(所蔵古文書に含まれる絵図類のうち、内容的に貴重であり、なおかつ大型サイズであることなどから原本ではなく複製物による閲覧利用が望ましいもの)
  • 地図複製 29件(所蔵地図のうち、利用頻度が高く、あるいは原本に傷みがあるなど、複製物による閲覧利用が望ましいもの)

史料館分室の移転

平成24年2月、館の全収蔵史料のうち約30%を保管している史料館分室の移転を実施しました。市立定時制高等学校の整備にともない、城内高校北側校舎の一部を利用していた分室を、大島3丁目の旧大庄西中学校体育館に移転したものです。

2 ボランティア

平成23年度も引き続き、「『尼崎市史』を読む会」などの企画・運営、史料調査や聞き取り調査、史料整理およびデジタル化など各種の作業について、ボランティアのみなさんの協力を得ました。
このうち、史料整理・デジタル化作業の実績は次のとおりです。

平成23年度ボランティア作業実績
作業の種類 作業日程 回数 参加実人数 延べ人数
写真整理 グループ作業(月1回) 9回 5人 延べ37人
随時個人作業 122回 3人 延べ122人
古文書整理 グループ作業(月1回) 9回 7人 延べ43人
マイクロフィルム保存 グループ作業(月2回) 15回 9人 延べ69人
その他の作業 随時個人作業 92回 7人 延べ92人
合計 247回 25人 延べ363人

平成23年度に新たに着手した作業として、古文書整理ボランティアのみなさんによる「常吉村文書」の整理作業があります。これについては、「1 史料の収集・整理・公開」の古文書・近現代文書類の項をご参照ください。

3 地域研究史料館専門委員

平成23年度地域研究史料館専門委員
代表 岩城卓二
いわきたくじ
日本近世史 京都大学人文科学研究所(准教授)
副代表 市澤哲
いちざわてつ
日本中世史 神戸大学大学院人文学研究科(教授)
垣東弘一
かきとうひろかず
教育システム情報学 園田学園女子大学(短期大学部准教授、そのだインターネットキャンパス所長、情報教育センター課長)

地域研究史料館では、史料館事業全般について、調査・研究していただき、また指導・助言を仰ぐことを目的として、各分野の専門家を専門委員として委嘱しています。
平成23年度、委嘱した委員は前表のとおりです。

市澤委員および岩城委員には、それぞれ担当の時代分野についての調査・研究や史料情報提供などを行なっていただき、また次項に取り上げる新「尼崎市史」編集事業について、刊行物準備に向けた調査事項の検討と調査の実施などをご担当いただきました。
垣東委員には、新「尼崎市史」編集事業の一環として実施したWeb版『図説尼崎の歴史』データ構築に関する共同研究事業(平成23年8月Web公開)を、主としてご担当いただきました。

4 編集事業-新「尼崎市史」及び史料館紀要『地域史研究』-

新「尼崎市史」

(参考: 「事業要覧」資料編p17「新尼崎市史編集委員会委員名簿」、p25「新「尼崎市史」編集事業計画概要・同イメージ図」)
新「尼崎市史」編集事業は、尼崎市制80周年記念振興事業として平成8年度に開始し、市制100周年の平成28年度に完結予定の事業です。「学ぶ市史から調べる市史へ」を基本コンセプトに、市制100周年に向けて、歴史情報のWeb公開と刊行物発行からなる事業計画を実施しています。
このうち歴史情報のWeb公開の一環として、平成19年度から園田学園女子大学・同短期大学部との連携により『図説尼崎の歴史』のWeb版構築をすすめ、平成21年度・22年度には同大学との間に共同研究事業契約を結んで、本格的なデータ構築作業を実施していただきました。
こうして完成したデータを、平成23年8月にWeb上に公開し、Web版『図説尼崎の歴史』の運用を開始しました。公開後は各方面からご好評をいただいており、アクセス件数は月平均770ページビューをカウントしています。
また、市制100周年記念刊行物準備のための調査・検討作業として、主として地域研究史料館専門委員と地域研究史料館スタッフによるワーキング作業等を実施しました。

史料館紀要『地域史研究』

昭和46年(1971)10月に尼崎市史紀要として創刊し、昭和51年度より尼崎市立地域研究史料館紀要として刊行を続けている『地域史研究』は、平成23年9月に第111号を発行しました。
『地域史研究』第111号 A5判102頁 600部発行 頒価850円
-目次-
グラビア 昭和戦前期の阪神国道・西難波(木田幸雄氏寄贈写真)
論文 中世都市尼崎の空間構造 藤本誉博
難波「八十嶋」と神崎川・猪名川下流域 黒田慶一
史煙 尼崎藩主・青山幸利遺徳顕彰碑-銘文と建立者たち- 中村光夫
誌上レファレンス 地域研究史料館
学生によるウェブ版『図説尼崎の歴史』の開発 垣東弘一
人間魚雷・回天と阪本宣道君のこと-前編回天のこと- 寺内邦夫

5 講座・自主グループ等の催し

『尼崎市史』を読む会月例会

平成23年度も引き続き、『図説尼崎の歴史』をテキストとする『尼崎市史』を読む会の月例会を、毎月第3木曜日の午後6時~7時30分、中央図書館セミナー室において開催しました。第186回から第197回まで12回開催し、参加者は延べ254人でした。

『尼崎市史』を読む会第一巻分科会

「『尼崎市史』を読む会」参加者有志が、尼崎の古代・中世史に関係する文献や論文を読み、自由な意見交換を通じて理解を深めることをめざして始めた研究会です。毎月第1金曜日の午後6時から7時30分まで、平成23年度は地域研究史料館において10回開催し、参加者は延べ55人でした。報告は参加者が輪番で担当し、天野忠幸氏の著書『戦国期三好政権の研究』(清文堂、2010年)をテキストとして、地道な学習をすすめています。

自主グループ-尼崎の近世古文書を楽しむ会

この会は、史料館が保存・公開する尼崎関係の古文書をテキストにして、近世のくずし字の読解に習熟することと、尼崎地域の近世史に親しむことを目的としています。例会の運営は参加者が中心となって行ない、解読の成果は参加者有志がデジタル入力して史料館に保存しています。将来的に解読文のデータベースとして公開する構想のもと、史料館はテキストの選定、解読・内容調査等において助言・協力しています。
次の3クラスにわかれており、いずれも午後1時30分~3時30分、地域研究史料館会議室を会場として開催しています。

  • 第2・第4日曜日開催クラス  20回開催  参加人数延べ68人
    テキスト1=江戸時代の実録小説「銀の笄(かんざし)」
    テキストは、Web 上に公開されている早稲田大学図書館コレクションから画像をダウンロードして使用しました。
    小説の内容は、元文4、5年(1739、1740)に実際に起きた辰巳屋騒動を題材としています。辰巳屋は「当時大坂一番の分限」者と称された富豪の商家で、家督相続をめぐる一族の紛争は江戸の幕府評定所の裁くところとなり、大坂町奉行など幕府役人たちをも巻き込んだ一大疑獄事件でした。この小説の冒頭部分に、尼崎城下辰巳町に住んでいた初代辰巳屋が大坂へ出るきっかけとなった事件として、尼崎藩の悪家老と女中お米の物語が綴られており、その部分を解読しました。
    テキスト2=道意新田・橋本治左衛門氏文書「諸願覚え日記」
    (安政4年(1857)9月から同6年6月までを解読)
  • 第2・第4金曜日開催クラス  21回開催  参加人数延べ176人
    テキスト=早稲田大学図書館所蔵服部文庫「山中新右衛門関係文書」
    伊丹市域の旧鴻池村山中家は、戦国時代の悲運の武将・山中鹿之助の子孫を名乗っていました。テキストは、この山中家の存続をめぐって幕末期に生じた紛争(元当主の新右衛門と大坂鴻池一族との紛争)を調停した尼崎藩担当者の記録です。
  • 第1・第3金曜日開催クラス  17回開催  参加人数延べ166人
    講師=石井進さん
    テキスト1=古田嘉章氏文書「時友村諸事留控帳」
    (弘化4年(1847)8月から嘉永元年(1848)5月までを解読)
    テキスト2=伊丹市荒村寺〔こうそんじ〕所蔵「有岡古城之記」「有岡古城之記続編」
    この史料は、伊丹の俳人照顔斎梶曲阜〔かじきょくふ〕が「有岡宿昔話」や「有岡むかし語余録」など伊丹地域の古記録を収集・編纂した「有岡古続語」から、有岡城に関する記述を選んで慶応元年(1865)に抜き書きしたもの。文化年間から慶応までの部分(1804~1865)は、編者である曲阜自身の見聞によると記しています。曲阜は俗名大和田屋 金兵衛(金平)という江戸下り酒の酒造家で、隠居して文芸に励んだ人物です。テキストの一部だけが『伊丹史料叢書』4荒木村重史料(昭和53年)に翻刻されており、全文の翻刻を希望する荒村寺から提供された複製物をテキストとして使用しました。
    見学会=テキスト1の古文書が伝来した旧時友村および隣接する旧友行村地域の現地見学を実施しました。

6 市民団体・研究機関等との協働・連携

市民、地域団体等からの要請による出講
尼崎ボランティアガイド養成講座、尼崎消費者協会総会(市政出前講座)、あまがさき市民まちづくり研究会等主催近代建築保存活用シンポジウム(第2回)、小田会歴史探訪、尼崎東ロータリークラブ(市政出前講座)、東園田町会(市政出前講座)、崇徳院社会福祉連絡協議会連続歴史学習会、万葉の里・猪名寺再生委員会「猪名寺ぶらり散策ツアー」、武庫之荘文化会セミナー(市政出前講座)
尼崎市・他行政機関・公的機関等からの要請による出講
尼火会〔にかかい〕市内歴史建造物視察、尼崎市新任職員研修、市河港課「尼崎運河講習会」、中央地域振興連絡推進会議・生涯学習部会主催歴史散歩、中央公民館開明分館講座、市立総合老人福祉センター講座、市立明和小学校出張授業、市立小園小学校校内研修会、県立尼崎稲園高校PTA(市政出前講座)、園田学園女子大学「シニア専修コース・日本史学」講義、関西国際大学公開講座、神戸大学大学院人文学研究科「地域歴史遺産保全活用基礎論A」講義
講座・展示・調査・出版等への企画立案・実施協力・史料提供
サロン・ド・サモン主催「尼崎歴史講座」(「神戸・阪神歴史講座」)、猪名寺自治会猪名寺廃寺跡歴史パネル作成、伊丹市立博物館テーマ展「旧村シリーズ下河原」、甲南大学人間科学研究所発行『兵庫県学童疎開関係史料集成』第二輯、神戸大学大学院人文学研究科「地域歴史文化連携コンソーシアム」会議

なお、講座・展示・調査・出版等への企画立案・実施協力・史料提供のうち、甲南大学人間科学研究所発行『兵庫県学童疎開関係史料集成』第 二輯は、同研究所が文部科学省の私立大学戦略的研究基盤形成支援事業の助成をうけて平成20年度から実施している「心の危機の見極めと実践的ネットワークの創造」に向けた共同研究プロジェクトのうち「子ども時代の戦争体験」をテーマとする調査研究の成果物として、編集刊行されたものです。同書には、当館が所蔵する藤田浩明氏文書(浜国民学校学童集団疎開に関する史料)の一部を翻刻・掲載していただきました。
また「尼崎歴史講座」は、尼崎市城内地区を中心に歴史・文化を活かしたまちづくり活動に取り組む市民団体サロン・ド・サモンが主催する催しです。「尼崎歴史講座」であると同時に、兵庫県域を対象とする郷土史研究団体「神戸史学会」との共催による連続講座「神戸・阪神歴史講座」の一環として平成22年度から連続開催されており、当館は企画立案・実施過程において全面的に協力しました。

参考:平成23年度神戸・阪神歴史講座(尼崎歴史講座)実施状況
神戸・阪神歴史講座第5回(尼崎歴史講座第3回)
主催
神戸史学会、サロン・ド・サモン
共催
尼崎市市民運動中央地区推進協議会(県民交流広場事業)
日時
平成24年3月4日
会場
尼崎市中央地域振興センターコミュニティホール
講演
石川道子さん(酒史学会会員)「尼崎城下の江戸積み酒造業」
参加者
85人
-オプショナルツアー「尼崎城遺跡を訪ねて」-
日時
平成24年3月4日
解説
中川雄三さん(尼崎ボランティアガイドの会会員)
参加者
30人