長洲海臨寺跡天正8年一石五輪塔

ながすかいりんじあとてんしょう8ねんいっせきごりんとう
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』

  長洲天満宮の西側に海臨さんと呼ばれている小堂があり、境内西南隅で発見された。和泉砂岩製で完全。総高68cm。素弁3葉と隅も素弁の反花〔かえりばな〕を刻出した基壇まで一石で造っている。各輪の正面に東方発心門の5梵字を配し、基礎のアの面の3行計12字の銘文を陰刻。

天正八年(天正8=1580年)/ア道順門/六月十九日

  銘文中の道順門は、おそらく道順禅門であり、禅の字を書き落したものであろう。一石五輪塔は基礎の下端を埋めて建てるのが本格であり普遍的である。ごくまれに反花式基壇上に建てたものがあるが、多くは別石造りであり、この塔のように造りつけたものはきわめて珍しい。市内には本興寺如来院に各一例がある。さらに注目すべきことは各文字に墨を入れていることである。また、銘文を彫らずに墨書しただけのものがまれに知られている。本塔を調査したときに茶褐色の土がついていたので、調査に近い時期に掘り出されたものであろう。墨がよく残ったのは土中に埋っていたからである。

執筆者: 田岡香逸

参考文献

  • 『尼崎市史』第10巻 1974

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