六甲山地

ろっこうさんち
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』

  大阪湾の北側にそびえる花崗岩〔かこうがん〕よりなる連嶺が六甲山地である。最高点931mに達し、北側の丹波山地と大阪湾とを境している。山頂部に広く平坦な地形面が発達していて、ホテルや別荘が立ち並び、ゴルフ場や植物園もあって、阪神地域市民のリゾートプレースとなっている。この平坦な地形面は隆起準平原面と呼ばれ、もと海水面に接して形成された平原面がその後地殻変動によって、現在の高所まで隆起してきたものである。その経過を示す資料が六甲山頂から甲山を通り、西宮・尼崎平野を経て大阪湾にいたる断面の中で得られている。それらを総合すると、甲山の周辺には約100万年前に現在の大阪湾のような内海に堆積したとみられる厚い粘土層(大阪層群Ma1粘土層)が分布していて、標高200mに達するこの高原が当時海底であったことを証明している。さらにこの粘土層を大阪湾方向に追跡すると、甲陽断層を境として平野下に没し、大阪港付近のボーリング資料によれば、大阪平野の地下約500mに潜在していることが判明した。さらに甲山付近より一段高い標高500mの芦屋ゴルフ場付近にはこの海に注ぐ河口の堆積層が残っている。したがって100万年前には、現在の姿をした六甲山地は存在しなかったことになる。その後の隆起で、甲陽断層や芦屋断層などの断層にそって山塊がずれながら急速に上昇して現在に至ったのであるが、これらの断層の発生は50ないし60万年前と推定されるので、六甲山地の形成の大部分はそれ以後と考えられる。六甲は火山を除いて最も新しい山の一つといえよう。その隆起速度は100万年間に500mであるから平均すると1,000年につき0.5mであるが、50万年以降でみると1,000年に1mに近い大きな値となる。このような六甲山地の形成運動を模式とするような新しい地殻変動を「六甲変動」という。この変動は地質学的にいうと、中世更新期から活発化し現在に継続しているのである。

執筆者: 藤田和夫

参考文献

  • 藤田和夫『変動する日本列島』 1985 岩波新書
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