apedia:『尼崎地域史事典』序文

出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』

  以下は、平成8年刊行の冊子版『尼崎地域史事典』に掲載された、尼崎市長による序文です。


  猪名川と武庫川という二つの流れが育んだ尼崎地域には、海・川と大地の産み出す豊かな実りを求めて、原始より人々が居住しはじめました。やがて、古代から中世にかけては、大和・難波・京といった政治・経済の中心地と、西国・瀬戸内を結ぶ海陸交通の要地として、尼崎の地は栄えました。さらに近世には、大坂の西の備えの城下町として発展し、近代には日本有数の工業都市となるなど、歴史のなかで常に重要な位置を占めてきました。

  この、長く築かれてきた尼崎の歴史を、広く現在と未来の市民の皆さんに伝え、さらには、尼崎に関心を持つすべての人々に、知っていただくことが重要と考えます。なぜなら、現在の本市が直面しているさまざまな都市課題を解決し、21世紀に向けてあらたなまちづくりを進めていくためには、地域に対する幅広い理解と認識を養い、愛着心を育み、歴史的経過と事実に立って、地域が一体となって取り組んでいく必要があると考えるからです。さらには、日本中あるいは世界の人々からも愛され、親しまれる尼崎でなければ、よりよいまちづくりはできないと考えます。

  本市ではすでに、昭和41年から63年にかけて、尼崎地域の各時代・分野の歴史を幅広く調査・研究し、『尼崎市史』全13巻および別冊『尼崎の戦後史』として刊行しました。さらに、市史編さんの過程で調査・収集した、尼崎地域のさまざまな歴史資料を保存・公開すべく、市史編修室を発展させる形で、昭和50年に尼崎市立地域研究史料館を開設しました。これらの事業も、本市の歴史をできるだけ多くの方々に知っていただくことを、目指したものでした。

  このたび刊行しました『尼崎地域史事典』も、このような考え方のもとに企画したものであります。尼崎地域の歴史に関する事項・事件・人名・地名などを網羅し、事典形式で解説した本書は、昭和63年に編さんに着手し、監修者並びに多くの執筆者の方々の御協力を得て事業を進めてまいりました。平成7年3月に発刊する予定でしたが、刊行を目前にした平成7年1月17日、突如として阪神・淡路地域を襲った大震災のため、発刊の延期を余儀なくされ、関係者の皆様方にご迷惑をおかけしました。しかし、ようやくここに本『事典』を刊行することができました。

  本『事典』に収録された1,346項目は、『尼崎市史』の、言い換えれば尼崎地域史のエッセンスと言えます。さらには、『市史』刊行後の史料館における調査・研究の成果もまた豊富に盛り込まれております。今日、全国各地の自治体の手で自治体史が刊行されておりますが、このような事典形式のものはほとんど例がなく、全国に先駆けて刊行することができました。

  市民や研究者の皆さん、さらには尼崎に関心を持つすべての方々が、『尼崎市史』とともにこの『事典』を大いに活用され、尼崎地域に対する理解と認識をより一層深め、愛着心を育んでくださることを、心から願っております。

  最後になりましたが、本書の刊行に御協力いただきました監修者、執筆者、並びに関係各位に、厚く御礼申し上げます。

平成8年3月31日

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