若王寺遺跡

なこうじいせき
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』

  若王寺3丁目にある弥生時代後期から古墳時代全期を通じて母村的大集落遺跡。集落を構成する住居の柱穴は円形・方形・不定形の柱穴群にわけられ、平地式・高床式の住居を一般とする。柱穴の大部分は底に礎板を遺存しており、柱は基部に縄掛け抉〔えぐ〕りをもつものが目立った。柱穴は1.6m前後の等間隔で整然と並び、大集落群の遺構がみられた。井戸も数か所みられ、径1mの井戸が一般である。井戸底に大形甕〔かめ〕や壺もみられた。井戸枠には船形にえぐった木器も使われていた。大形土杭や溝状遺構も広大な調査区域内で検出され、いずれも大量の遺物を含んでいた。とくに製鉄関係の遺物が当遺跡の特色で、多量の鉄滓〔てつかす〕・鞴〔ふいご〕の口・鉄斧〔てつおの〕・鉄刀・鉄鏃〔てつやじり〕が出土した。鞴の口は40余点出土している。鉄滓からは鉄鉱石とくに砂鉄を精錬していたことが判明している。石器には滑石製臼玉〔かつせきせいうすだま〕・管玉・双孔円板など祭祀用具のほか、砥石〔といし〕・軽石・滑石製紡錘車などがある。他に竹籠〔たけかご〕の完形品、石斧〔いしおの〕・石鏃・土錘〔つちおもり〕類・弓・木鍬・木製発火器・土製管などがあり、珍しいものとしては米の焦げ痕の残る布留〔ふる〕式の土師器〔はじき〕小形壺、大形のかまど形土器、集落内からの発見例は少ない須恵器〔すえき〕子持ち装飾壺・須恵器大形器台・木札状木器などがある。

執筆者: 村川行弘

参考文献

  • 『尼崎市若王寺遺跡発掘調査概要』尼崎市文化調査報告4 1966

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