長遠寺天正13年雲版

ぢょうおんじてんしょう13ねんうんばん
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』

  寺町長遠寺所蔵。雲版は寺で法要などの開始を知らせるために叩く鳴器である。青銅製で、上下47.3cm、左右45.2cm。正面中央の撞座〔つきざ〕上に配した位牌形〔いはいがた〕と、その左右に各1行計12字の本銘を陽鋳し、位牌形の中には7字の題目を陰刻している。さらに右側の陽鋳銘の左右に各3行と左側の陽鋳銘の左に1行、計40字の追銘を陰刻している。

摂州尼崎長遠寺日鎮(花押)/塚口屋源兵衛奉寄進/□徳(以上追銘)/豊後州瑞光寺(本銘)/尼善住灵四月廿二日(撞座)(追銘)/南無妙法蓮華経/住山 明室置之(本銘)/天正十三乙酉五月十一日(追銘)(天正13=1585年)

  本銘に紀年がないので製作年代は明らかでないが、南北朝末期をさかのぼるものではないだろう。追銘からは、天正13年に塚口屋源兵衛によって買得され、当寺へ寄進されたことが知られる。雲版は中世の鳴器として遺例が少なく、これは県下における唯一の在銘遺品として貴重な資料。注目すべきは追銘第1行の花押である。古文書などには多いが、金石文にはきわめてまれである。なお、銘文5行目の灵は霊の異体字。

執筆者: 田岡香逸

  1983年(昭和58)3月24日、長遠寺天正13年雲版は尼崎市指定文化財に指定された。

執筆者: apedia編集部

参考文献

  • 『尼崎市史』第10巻 1974
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