摂泉十二郷

せっせんじゅうにごう
出典: Web版尼崎地域史事典『apedia』
摂泉十二郷
摂泉十二郷

  近世において江戸積酒造業を営んでいた十二郷の酒造仲間の地域を指す。その十二郷とは摂津では大坂三郷・伝法(大阪市)、北在池田伊丹尼崎西宮今津(西宮市)、兵庫・上灘・下灘(神戸市)、それに和泉の堺を指し、大坂三郷の酒造行事が十二郷触頭を勤めていた。このうち北在郷のみは特定の地域を指すにではなく、川辺郡を中心に散在する江戸積酒造家を包摂した名称である。江戸積酒造業は近世前期には城下町・宿場町・在郷町を中心に展開したのに対し、近世後期、特に享保末年(1730年代)以降には農村を中心に新たな展開みせた。12郷のうち上灘・下灘・今津の3郷が後者に属し、この3郷を除く9郷は前者に属した。したがって十二郷酒造仲間結成の時期は、近世前期の江戸積酒造体制が新興在方酒造業の灘酒造業の台頭によって停滞変貌を余儀なくされていった1784年(天明4)前後と推定される。特権的な9郷の酒造仲間が大坂三郷を触頭に、上灘・下灘・今津の在方3郷を包摂することにより、江戸積酒造体制の再編を意図したものと考えられる。

執筆者: 柚木学

参考文献

  • 柚木学『酒造りの歴史』 1987 雄山閣出版
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