現代編第3節/石油危機から震災まで4/開発と都市の変貌(辻川敦)




 石油危機以降、市が総合基本計画にもとづいて都市計画を進めるなか、尼崎は大きく変貌していきます。

都市計画の推進

 高度経済成長期以降の都市計画が意図したのは、無秩序な宅地化を防ぐ計画的な市街地造成、老朽〔ろうきゅう〕不良住宅密集地や住宅と工場の混在する地域の環境改善、ターミナル開発・道路整備による都市の交通・商業機能の充実、都市の美的景観の形成といったことでした。1980年代後半から90年代初頭のバブル期には、関西国際空港(平成6年・1994開港)・阪神高速5号湾岸線(同年開通)、JR東西線(京橋〜尼崎、平成9年開通)といった、広域的ないし国際的プロジェクトへの連動という課題も加わりました。
 これら全体を通して、住環境改善や都市機能整備をはかることで、都市活力の再生をめざしたのが、この時期の都市計画・再開発であったと言えます。昭和44年(1969)、こういった都市計画事業を推進していくため、尼崎市は都市計画審議会を設置します。翌45年10月には、尼崎市を含む阪神間都市計画区域が兵庫県により決定され、尼崎市の都市計画も、この上位計画にもとづいて実施されることになります。

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都市再開発

 都市再開発には、土地区画整理、住宅地区改良、市街地再開発などの手法があります。このうち尼崎市において、施行面積の比率が圧倒的なのが土地区画整理です。大正期以来、宅地・商業地などの造成を目的として、地権者の組合や行政の手ですすめられてきました。高度成長期以降は市街地整備という本来の目的に加えて、阪神地方を貫通する東西道路交通整備という国レベルの施策の一環という意味合いが増し、さらに旺盛に推しすすめられます。その結果、平成16年度末段階における施行面積は施行済・施行中あわせて2,659.7ヘクタール、河川を除く市街化区域に対する施行率約57.8%と全国的に見ても高い比率を示しており、「北部の一団の農地を除いてほぼ全市域を開発しつくした」(尼崎市都市計画課発行『尼崎の都市計画』−平成4年−)状況となっています。
 また、狭小〔きょうしょう〕・密集住宅区域を改善する事業手法が住宅地区改良事業です。尼崎市域においては、土地区画整理と併用する形で施行されている例もあります。

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市街地再開発事業

 土地区画整理による住宅地整備に対して、主として駅ターミナルなどの都心開発を目的に実施されたのが、市街地再開発事業でした。昭和44年の都市再開発法制定を受けて、尼崎市は昭和45年度に市街地再開発の基本構想・計画を策定。以降、後掲図表のとおり事業を実施して来ました。
 ではこれらの事業によって、街はどう変わったのでしょうか。塚口南地区市街地再開発事業・塚口さんさんタウンを例にとって、見てみることとしましょう。
 大正9年(1920)の駅設置以降、阪急塚口駅周辺には商業地・住宅地が形成されます。再開発が構想された昭和40年代には、駅の南側に映画館3館や小規模店舗、ゴルフ練習場などがあり、バスやタクシーが乗り入れる駅前は狭く混雑し、周囲にはまだ田畑や水路も見られたと言います。当時の市内駅前は、しばしばこのように不便で、防災や交通面でも安全とは言えない状態でした。
 このため、市は塚口駅前を最優先の再開発対象地とし、市域北部の「都市核」と位置付けて事業に着手します。駅の南側に7,800uの大規模ターミナル広場を設け、その周囲のビル3棟に店舗や住宅を配する計画が立案されますが、市域初の大規模再開発であっただけに、事業実施は試行錯誤の連続でした。権利者や周辺住民には計画に消極的あるいは反対の人もあり、相互理解や信頼関係づくりなど、事業の関係者には大変な苦労があったと言います。核となる大型店誘致を巡っては、900m北のグンゼ塚口工場跡地に同時に計画された西武つかしんとの競合や、地元商業者との調整などさまざまな問題が生じました。
 数々の困難を乗り越え、昭和53年7月7日のオープンには8万人が来店と、盛況のうちにスタートを切ることができました。なお管理運営会社として、尼崎都市開発(株)が市その他の出資により設立されました。

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再開発の曲がり角

 さんさんタウンを皮切りに市内の再開発がすすめられ、尼崎は複数の都心ターミナル、商業集積地を持つ都市としての風格を備えていきます。
 しかしながら、再開発による事業地の不動産価格上昇を前提として、再開発ビル内に事業主体が確保する保留床〔ほりゅうしょう〕部分を売却することで開発費をまかなう手法は常に有効であったとは言えず、1990年代以降右肩上がりの経済が終わりを告げたことで、なお一層の行き詰まりを見せることとなります。そういう意味では、時代環境に即応した新たなスタイルの都市開発が求められる時代が到来した、と言えるでしょう。



塚口南地区市街地再開発事業により完成した塚口さんさんタウン(昭和62年『わが町あまがさき』第34号より)


再開発前の阪急塚口駅南側(昭和50年6月、史料館撮影)


区域内にあった映画館、事業実施にともない再開発ビル内に入り存続(昭和50年6月、史料館撮影)


土地区画整理事業の施行状況(平成16年度末現在)
施行済 54事業 2,540.2ha
施行中 5事業 119.5ha
59事業 2,659.7ha

住宅地区改良事業の施行状況(平成16年度末現在)
施行済 13地区 37.28ha
施行中 4地区 31.77ha
17地区 69.05ha
改良住宅等建設戸数               3,516戸

市街地再開発事業の施行状況(平成16年度末現在)
地区名称 施行主体 面積(ha) 都市計画決定告示 事業計画決定公告 工事完了 施設概要 
潮江第一 組合 0.4 S46.3.30 S47.8.8 S49.4.1 RC 造5階 延4,072u
住宅:51戸、商業施設
塚口南 2.7 S46.11.30 S48.9.22 S53.7.6 SRC 造8・14・8階 延88,019u
住宅:120戸、商業施設 、駐車場
立花南第一 組合 0.5 S52.12.20 S53.3.7 S55.4.12 RC 造7階 延11,229u
住宅:43戸、店舗、業務施設
出屋敷駅北 1.8 S58.3.8 S60.11.11 H2.3.20 SRC 造12階 延42,955u
住宅:90戸、商業・業務施設 、駐車場
JR尼崎駅北第一 住都公団 2.0 S62.8.14 H2.7.11 H6.3.25 SRC 造8・8・14・5階 延43,067u
住宅:293戸、商業・業務施設、体育館 、駐車場
JR尼崎駅前 県公社 1.4 H2.7.13 H5.6.28 H10.1.12 SRC 造24・21・5階 延37,995u
住宅:336戸、公益施設、商業施設 、駐車場
JR尼崎駅北第二 住都公団 3.6 H3.12.13 H7.12.20 H11.11.18 SRC 造10・22階、RC 造 19階 延108,029u
住宅:358戸、商業・業務施設 、駐車場
立花南第二 組合 2.2 H5.7.20 H7.10.6 H12.5.30 SRC 造14・27階 延81,360u
住宅:359戸、商業・業務施設 、公益施設、駐車場
阪神尼崎駅東 0.9 H8.2.13 H11.5.18 H15.11.30 SRC 造13階2棟 延約15,500u
住宅:174戸、商業施設 、駐車場
阪神尼崎駅南 組合 0.5 H16.1.23 H17.1.28   SRC 造 延約31,000u
住宅:約160戸、店舗・業務

 

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